出版社内容情報
初めての世界大戦にして、初めての総力戦はいかに戦われたか? 師団の創設からトリアージの開発まで、すべてを変えた戦争の全体像
目次
第1章 起源
第2章 フランス革命戦争、一七九二‐一八〇二年
第3章 ナポレオン戦争、一八〇三‐一八一五年
第4章 総力戦、革命戦争
第5章 兵士と民間人
第6章 海戦
第7章 人民戦争
おわりに―遺産
著者等紹介
ラポート,マイク[ラポート,マイク] [Rapport,Mike]
グラスゴー大学人文科学部准教授。ブリストル大学歴史学博士。2000年より、王立歴史学協会会員を務めている。主な専門は、フランス革命とナポレオン時代の歴史
楠田悠貴[クスダユウキ]
東京大学大学院博士課程に在籍。専門は、フランス革命とナポレオン時代の歴史。フランス社会科学高等研究院、パリ第一大学パンテオン=ソルボンヌ校への留学を経て、現在日本学術振興会特別研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
50
読友のレビューから。仕事でドンピシャのタイミング。前半の概略史はコンパクトながら前後やヨーロッパ以外の地域にも目配せが効いており、とても参考になった。興味深いのはむしろ後半で、当時の徴兵のやり方、軍隊での懲罰など、へぇと思う内容がいくつもあった。元々入門書である上訳文もこなれており、読みやすかったが、この内容なら新書で出せなかったのだろうか。ナポレオン戦争の戦死者500万人!驚くべき数字だが、その半分以上が病死とは!20世紀の大戦も同様だが、戦争を「勇ましい」と思う向きの方はこの現実を噛みしめて欲しい。2020/10/15
サアベドラ
31
フランス革命戦争~ナポレオン戦争(1792年~1815年)のコンパクトな入門書。邦題からはわからないが原書は Oxford A very Short Introduction シリーズの一冊。著書はイギリスの歴史学者。戦術だの戦略だのに特化したいわゆるミリオタ向けの本ではなく、戦争を取り巻く国際情勢や兵士や民間人の視点などにも紙幅を割いており、最近の軍事史学のトレンドが反映されている。小著ではあるが、ナポレオン戦争を扱ったちゃんとした歴史書は日本ではまだ数が少ないようなので貴重な一冊と言える。2020/09/29
yyrn
30
23年間も凄惨な殺戮が繰り返されたら、私は平常心をもって生きていられるだろうか。1792年から1815年までのフランスが引き起こした内戦=フランス革命から広がった近隣諸国を巻き込んだ戦争は、軍事の天才ナポレオンの登場で世界大戦といえるほどの規模に拡大し(ヨーロッパ全土ばかりでなく、ロシアや中東、南北アメリカやアフリカ、インドまで)700万人の死者を出したという。徴兵を強要し、兵士の数で相手を圧倒した戦術は必然的に死者を増やし、殺戮に次ぐ殺戮の話に読みながら気分が悪くなった。⇒ 2020/12/04
Isamash
28
マイク・ラポート・グラスゴー大学准教授の2013年著作の訳本。1792〜1802年のフランス革命時の戦争と1803〜1815年ナポレオンによる戦争を一連一体のものとしている。南米をも巻き込んだ世界戦で、欧州初の総力戦でもあったらしい。仏軍には階級に因らない能力主義が長所としてあったとも。欧州の戦争は綺麗なイメージがあったが、実際は略奪や強姦等も普通にあったらしい。またナポレオンには電撃的進行のイメージがあったが、補給線が無く現場調達主義の反映とも。膨大な死亡者が有ったが、その原因には感染症蔓延もあった様。2022/03/05
六点
16
フランス革命の極端な賛美から離れた、「修正派」によるナポレオン戦争史。布陣図が一切出てこない「新しい軍事史」の著作である。アンシャン・レジームの遺産を十全に利用したフランスとナポレオンの齎した衝撃は、世界大戦そのものと言うしか無いインパクトを与えていたのだなあ、と、思う。ナポレオン以後で、欧州はそれまでとは決定的に違う社会になったのだ。社会と軍事の関係を考える上で、基本となるべき本であると思う。しかし、フランスはこれだけの人口に対する、巨大な戦死者の不在を埋め合わすことはできたのだろうかね。2020/10/12