出版社内容情報
作家の最晩年に編集者として謦咳に接した著者による初の伝記。未公開資料と知られざる逸話を交えながら、不世出の異才の生涯を辿る。
内容説明
「伊達の薄着」の美学。澁澤龍彦の最晩年に編集者として謦咳に接した著者による、初の伝記。未公開資料と知られざる逸話を交えながら、不世出の異才の生涯を克明に辿る。
目次
第1章 狐のだんぶくろ(一九二八‐一九四五)
第2章 大胯びらき(一九四六‐一九五四)
第3章 神聖受胎(一九五四‐一九五九)
第4章 サド復活(一九六〇‐一九六二)
第5章 妖人奇人館(一九六三‐一九六七)
第6章 ホモ・エロティクス(一九六八‐一九七〇)
第7章 胡桃の中の世界(一九七一‐一九七五)
第8章 記憶の遠近法(一九七六‐一九七九)
第9章 魔法のランプ(一九八〇‐一九八六)
第10章 太陽王と月の王(一九八六‐一九八七)
著者等紹介
礒崎純一[イソザキジュンイチ]
1959年生まれ。慶應義塾大学文学部フランス文学科卒。編集者。『書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録』(国書刊行会)を編纂(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
300
澁澤龍彦の詳細な評伝。書いたのは、晩年の澁澤とも付き合いのあった編集者の礒崎純一。フランス文学者の出口裕弘は澁澤を評して「ハッピー・プリンス」だという。また澁澤の 最初の妻、矢川澄子は澁澤の愛した言葉は「晴朗無上」であり、それはまさに澁澤そのものだったという。さすれば、本書のタイトル『龍彦親王航海記』は、まさにこれ以上ないくらいの命名ではないか。また、香山一郎撮影の表紙写真も澁澤の最上の側面を見事に伝えている。我らが愛する澁澤龍彦に改めて強く惹かれた一書だった。2024/07/18
starbro
183
澁澤 龍彦は、学生時代から永年に渡って読み続けている作家です。最初で最期?の澁澤 龍彦の伝記、興味深く読みました。私は、澁澤 龍彦は、異端で孤高の天才だと勝手に思っていたのですが、思いの外俗っぽい(三島由紀夫と赤坂のディスコ ムゲンに行ったり、an・anに連載したり等)文学者でした。良く言えば『永遠の少年』、悪く言えば自己中『人間失格』です(笑)いつか澁澤 龍彦全集全24巻http://www.kawade.co.jp/np/search_result.html?ser_id=70650 を読んでみたい。2020/03/23
kinkin
81
澁澤龍彦氏の評伝。分厚く読み応えのある本だ。彼の生い立ちとともに多くの著作、彼を取り巻く環境や交遊録が書かれている。彼の著作では『高丘親王効果親王記』がベストだと思う。初めて読んだときの不思議な雰囲気と本なのにそこからはとてもよい香りが漂ってくる。博覧強記の彼にしか書けないファンタジー。昭和の戦中期に少年時代を過ごし青春を謳歌できなくともこのような本が書けたことはすごい。氏の著作は多く読んでいない。美しくくすんだ不思議さときらめく神秘さ、キリリとした鋭さを体感し彼を語るにはとても及ばない。もっと読もう 2020/02/01
らぱん
53
①並外れた魅力を持つ人物の伝記となっており、とても面白かった。好きなことしかやりたくないを貫いた人であり、長所は当然だが短所が魅力になる稀有な人で「人たらし」と言える。浮世離れした逸話が多くあり、周囲を驚かせ呆れられ怒らせたりもするが、結局受け入れることになる。半ば諦めて受容した人だけが残ったのだろうが、徳のようなものがあったのではないかと思える。作品にも言えるのだが、この人は内的な葛藤を抱えていないように見えるタイプで、超然でもあり、無垢ともとれ、いずれにしろ常人とは違う物差しで生きた人なのだろう。↓2019/11/24
蘭奢待
42
青年期まで良家で不自由なく育ち、秀才として過ごす。浦和高校から二浪して東大へ。コクトーに心酔しやがてマルキド・サドへ。サド裁判を争い、アナーキーな文学者として名を馳せる。集まる仲間たちは土方巽、唐十郎。三島由紀夫、埴谷雄高、種村季弘。横尾忠則、四谷シモン。文学、美術、芸能。耽美、幻想、綺譚、前衛の代名詞な人々。昭和30〜50年代あたりの、高度成長期の裏面を飾る面々。仲間内で何かと酒を酌み大騒ぎする一方、同窓会などにもマメに顔を出しているのが意外。本書のラストは批判的意見も含めた澁澤論がさらに興味深い。