出版社内容情報
『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者による表題作ほか、ミステリーやSFなど多彩な形で表現された7名の若手実力派女性作家の短篇集。
内容説明
『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者による表題作を収録!各世代の女性の共感を呼ぶ、7名の若手実力派女性作家の短篇集。
著者等紹介
斎藤真理子[サイトウマリコ]
翻訳家。パク・ミンギュ『カステラ』(共訳、クレイン)で第1回日本翻訳大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
68
日本女性が騒いでいた韓国ドラマも、実は昔ながらの男女の役割やら価値観をうまく浸透させるツールと考えると、思想教育みたいで恐ろしい。表題作も「オッパ」という親しみやすい呼びかけから始まるが、最初と最後では口調が全然違っている。語り手一人で一方的に語り続ける作品を飽きさせないというのはなかなか難しいが、さすがチョ・ナムジュ、変化をつけて最後まで引っ張っている。7篇中最も笑えて、キム・ジヨンで「うわ」となった人も心が晴れるのでは。「更年」のキム・イソル10年前は金槌で男の頭を割ってしまう女の作品を書いていた。2019/03/19
azukinako
58
フェミニズムという括りに身構えて読んだのだが、毎回違うものが飛び出してくると楽しい読書だった。最初の3篇は韓国ドラマでよく目にするシーンを思い出させるが、小説として文字で読むと、こんなにも辛く気持ちに迫ってくるのかと驚く。映像と違って簡単に押し流されないからなのかもしれない。「更年」は特にしんどかったな。「すべてを元の位置へ」はホラーのようにじわじわと怖さが迫ってくる。「異邦人」のハードボイルドも好きだ。「ハルピュイアと祭りの夜」「火星の子」これは映像で観たいかも。2020/10/03
アマニョッキ
58
すごく面白かったのだけれど、この作品を読むのが少し遅すぎたかもしれない。この作品にたどり着くまでに様々な韓国文学に触れてしまい、お気に入り作家さんも決まってきて(たくさんいるのだけれども!)、あまり感動のないまま最後まで読み終えてしまった…。でも韓国文学入門にはぴったりの一冊かも。「フェミニズム小説集」と括らないほうがいいかなとも思ったり。バラエティに富んだ韓国文学を体験したい方にはお薦めです。2020/05/26
りつこ
48
表題作は「82年生まれ、キム・ジヨン」同様、あーなんだ思ったほど酷くはないじゃん、普通じゃんと思った後で、これを普通と思う自分にドキッとする。身につまされたのが「更年」。主人公が感じる違和感は他人事ではなくて読んでいて痛かった…。でも彼女が感じる違和感や罪悪感は間違っていない。ラストは苦いけれどほんの少しの清々しさも。ノワール小説あり、バトルロワイヤル(!)あり、SFあり。フェミニズム小説といいながら、バラエティに富んだ作品でとても楽しかった!韓国の小説、ほんとに面白い!2019/09/13
Narr
26
フェミニズムをテーマに7つの物語で編まれたアンソロジー。表題作『ヒョンナムオッパへ』や『あなたの平和』『更年』などは実社会との距離が近い。勿論、ミソジニーからの脱却を予感させる箇所もあるが短編全体を通してのヒリヒリした感強め。一方で『異邦人』はノワール×フェミニズム、『火星の子』はSF×フェミニズムと思わず作品世界に「いいね!」を3回は押したくなる構成。『火星の子』は特に男性性が顔を出さず女性性(とされるもの含めて)のみの世界観が光る。だってスプートニク二号に乗ってたライカ(犬)が保母さんだよ?良くない?2019/11/20