社会のなかのコモンズ―公共性を超えて

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  • サイズ B6判/ページ数 240p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784560096611
  • NDC分類 301
  • Cコード C0036

出版社内容情報

ともに生きる、新たな方法

 東日本大震災以降、以前にも増して「コモンズ」という言葉を聞く機会が増えてきた。人口が減少し低成長を余儀なくする時代に、なぜこの概念が脚光を浴びることになったのか? 日本の社会科学を牽引する論客が回答を与えようとしたのが本書である。
 「コモンズ」が人口に膾炙するきっかけとなったのは、ギャレット・ハーディンの「コモンズ(共有地)の悲劇」論文(1968年)だった。
 本書では、1990年代に流行った「公共性」論、さらにはリベラリズム・コミュニタリアニズム・リバタリアニズムといった思潮を再考しながら、この概念を彫琢するとともに、いかなる場でこの概念が有効か検証していく。
 大正日本の「社会」への眼差し、まちおこしが大きな課題となっている商店街、持ち家社会で周縁化した戦後日本の公営住宅、豊かさから取り残されたカナダのインディアン保留地、利益分配が出来なくなった政党、時空を超越する宇宙・サイバー空間、移民危機に揺れる欧州国民国家──。
 そこで浮かび上がってくるのは、「公」か「私」かではなく、「公」と「私」をいかに媒介する論理を見つけだすかである。これまでの公共性論の視界に入らなかったものは何なのか? 2020年代の「公私」論の決定版。

待鳥 聡史[マチドリ サトシ]
著・文・その他/編集

宇野 重規[ウノ シゲキ]
著・文・その他/編集

内容説明

ともに生きる、新たな方法。ポスト2020年の社会を考えるために。

目次

対談 いま、なぜ、モコンズか?前篇
1 歴史のなかのコモンズ(コモンズ概念は使えるか―起源から現代的用法;近代日本における「共有地」問題)
2 空間のなかのコモンズ(衰退する地方都市とコモンズ―北海道小樽市を事例として;コモンズとしての住宅は可能だったか―一九七〇年代初頭の公的賃貸住宅をめぐる議論の検証;保留地というコモンズの苦悩)
対談 いま、なぜ、コモンズか?後篇
3 制度のなかのコモンズ(コモンズとしての政党―新たな可能性の探究;脱領域的コモンズに社会的コモンズは構築できるか;ミートボールと立憲主義―移民/難民という観点からのコモンズ)

著者等紹介

待鳥聡史[マチドリサトシ]
1971年生まれ。京都大学大学院法学研究科博士後期課程退学。博士(法学)。現在、京都大学大学院法学研究科教授。『財政再建と民主主義』(有斐閣)でアメリカ学会清水博賞、『首相政治の制度分析』(千倉書房)でサントリー学芸賞

宇野重規[ウノシゲキ]
1967年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。現在、東京大学社会科学研究所教授。同研究所で“希望学”プロジェクトをリードしたほか、『政治哲学へ』(東京大学出版会)で渋沢・クローデル賞、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

うーひー

1
何らかのメンバーシップの下、メンバーが非競合的・非排他的に利用できる空間を「コモンズ」と定義し、その射程をコモンウェルス、地方都市、住宅政策、北米保留地、政党、サイバー空間等に求めた論文集。地域・都市政策や政党といった中間的メカニズムにコモンズを適用する議論は、伝統的で息苦しいコミュニタリアニズムを合目的的組織に軌道修正するプラクティカルな補助線にすぎないのではという印象を抱いたが、ネグリ、ハートのコモンウェルスやサイバー空間にコモンズ概念を適用する議論は、新しい統治形態の可能性を感じ興味深かった。2021/12/31

Atsumi_SAKURADA

1
「コモンズ」のみを共通項に、その歴史・街・家屋・組織・制度など、様々な切り口の論考が収録されています。空間以外からも論じることで、狭義の「共有地」から拡大された概念としての意義が強調される体裁をとっています。こうして国内外の主題が取り上げられている中で、日本においてこの概念が何を意味するのか、どこまで汎用できるのか、という元祖である欧州(特に英国)との相対化が、論点としての重要性をさらに増したようにも読めます。2020/11/11

akio numazawa

0
コモンズとは、なんらかの資源を共同で管理するための仕組みであり、それを支えるのはなんらかのコミュニティ。コミュニティのメンバーによって共有されるルールと規範。インセンティブの仕組みが重要であり、現代のコモンズに於いてはコミュニティに参加すること自体がインセンティブになる点が重要。 コミュニティのメンバーを結束させるのは相互の信頼関係。2020/01/01

mashi

0
「現代コモンズ論の展開」という見出しなのにレッシグの『コモンズ』を取り上げるのはどうかと思う。もう20年近く前の本だよ。それにレッシグのいう「コモンズ」は「フリー」と同義だから、本書でいうところの「伝統的」コモンズと連続的に捉えるのは誤りだと思う(レッシグも一応「コモンズ」を「コミュニティ」と結びつけているとはいえ、ここでいうコミュニティのメンバーシップはオープンなものだから、自然資源コモンズ研究でいうところの「コミュニティ」とは質的に異なるものだよ)。2019/05/29

chiro

0
冒頭にあるようにコモンズはコミュニタリアニズムと親和性があると思っていたが、実はリバタリアニズムと最も親和性があるという事がこの著作でよく理解できたと共に、その前提でコモンズを形成することが最も望まれる形になるのだろうと感じた。我々が生活するにあたっては多様化は避けられない現実であり、国家をベースとした共同体はそもそもベースとなり得ない中でのガバナンスを考えた時にはここで提唱されるコモンズによるしかないのだろうと思う。2019/02/19

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