出版社内容情報
庶民・剣闘士の治療から歴代皇帝の侍医としてまで名声を得たガレノス。その複雑な人柄とローマ帝国の医療衛生現場を生き生きと描く。
内容説明
ローマ帝国で歴代の皇帝から庶民までの治療を手がけ、著作がヨーロッパとイスラーム世界において、約千五百年にわたり医学の最高権威であり続けたガレノス。最新の研究を生かしてその人物と生涯を追いながら、著作にふれつつ、当時のローマ世界の医療や衛生状態を解説する。「医学の第一人者」初の評伝。
目次
序章 腐ったチーズ
第1章 ペルガモン
第2章 医学の習得
第3章 剣闘士
第4章 ローマ
第5章 解剖とボエトゥス
第6章 マルクス・アウレリウスと疫病
第7章 ガレノスと患者たち
第8章 大火
終章 西と東―ガレノスの二人の信奉者
著者等紹介
マターン,スーザン・P.[マターン,スーザンP.] [Mattern,Susan P.]
ジョージア大学歴史学教授。専門は古代ギリシア、ローマ、エジプトおよび当時の病気・医療・法律など。古代史についての著作多数。『ガレノス―西洋医学を支配したローマ帝国の医師』はアメリカの優れた専門書・学術書に送られるプローズ賞の2013年古典古代史部門で佳作に選ばれた
澤井直[サワイタダシ]
順天堂大学大学院医学研究科助教。1975年富山県生まれ。2003年京都大学大学院文学研究科博士後期課程学修退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
37
ひと昔前の大人気韓国ドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』では、両親を失い身寄りがない女性が才覚を見出されていくサクセスストーリーが話題となった。古代ローマにも、最終的に王の主治医となった彼女のように、出世街道を駆け上がった男性がいた。剣闘士相手の医師からローマ皇帝マルクス・アウレリウスの典医となったガレノスは、従軍にも同行して軍医も務めた。但し彼はチャングムと違って家柄が良かった。更にその事を多少ならず鼻にかける所があったようだ。昔のローマのきたないこと。2017/11/25
Homo Rudolfensis
23
☆4.0 サブタイトルが良くて、まさに、「西洋医学を支配した」巨人だと思います。ですが、そんな凄い人なのに、プリニウスみたいに、すごく俗物感がして親しみが湧くというか。頓珍漢な批判してきたから、公衆の面前で批判を全部叩き潰してやんよ、を実行したり、中傷に対して彼らは嫉妬してるのさ、スルーする私は大人の対応だね、と自画自賛風に自著に書いたり、俺皇帝に褒められちゃったぜ、と文化的に格下だが政治的に格上のローマ人からの称賛を、すかしつつ嬉しく思っちゃったり、ととにかく人間味に溢れています。2022/05/07
春風
9
1500年以上西洋医学の権威として君臨した医者の伝記。医者の人生にそんな大したイベントなんて起こらないだろと思って読んでいたら、これがなんとも波瀾万丈じゃないですか。剣闘士のスポーツドクターから始まって、薬の原料を求めての冒険あり、ライバルとのバトルあり、パンデミックとの戦いあり、最後には哲人皇帝マルクス・アウレリウスの典医に。歴史マンガかドラマにしたら面白くなりそう。2018/02/04
本とフルート
4
ジョン・ハンターを思い出しながら読んだ。医学に限らず、今の学問は先人たちの熱心な努力の賜物なのだろう。国も違えば時代も異なる人々が築いてきた知の結晶を、享受できる幸運に感じ入った。当時の医学は今とは全く異なるが、それにも関わらずガレノスの姿勢には敬服せざるを得ない。2021/05/14