出版社内容情報
イスラーム革命後のイラン、弾圧のため職を失った女性教授は、密かに禁じられた小説を読む読書会をひらく。衝撃の回想録。
アーザル・ナフィーシー[ナフィーシー]
市川 恵里[イチカワ エリ]
目次
第1部 ロリータ
第2部 ギャツビー
第3部 ジェイムズ
第4部 オースティン
著者等紹介
ナフィーシー,アーザル[ナフィーシー,アーザル] [Nafisi,Azar]
1950年頃、テヘランに生まれる。名門の出で、父は元テヘラン市長、母は国会議員。13歳から海外留学し、欧米で教育を受け、1979年のイラン革命直後に帰国し、テヘラン大学の教員となる。1981年、ヴェールの着用を拒否してテヘラン大学から追放される。その後、自由イスラーム大学、その他で教鞭をとる。1997年にアメリカに移住、現在はジョンズ・ホプキンズ大学教授。ワシントンDC在住
市川恵里[イチカワエリ]
早稲田大学第一文学部卒(英文学専修)。編集者を経て翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobi
73
大都会で退廃の象徴のような本を読む、との書名の印象はすぐに覆される。警戒心なく読書レビュー発信等無論できない、西欧の小説を読むことが身の危険と隣り合わせている。イスラム革命に至る日々の変化は、そんな世の中になるはずがないという感覚が分かるだけに身に迫る。ヴェール強要もプロパガンダ的発言もまだまし。身近な人の処刑、ミサイル攻撃の恐怖…。りんごのかじりかたがなまめかしすぎると女生徒が叱責され、楽器演奏に熱中している様子を見せてはいけないと注意される…。空想上の狂気の世界のよう。その中しなやかな人間洞察が凄い。2022/05/04
ルピナスさん
60
「アメリカに死を!」と言うイランで米文学を教える作者とその学生達。自由な生き方はアメリカの象徴であり、学びを継続することに危険が伴う。『ロリータ』『グレートギャツビー』を堕落したアメリカの象徴と酷評する生徒が現れ授業内で作品を裁判にかけながらも米文学から離れられないのは、「優れた小説は、人生と人生の複雑さに対する理解力と感受性を高め、モラルを善悪の固定した図式で捉える独善を防いでくれ」それを若者達が求めているから。国に翻弄されながら、文学と学びに浸った一時期を心の支えに生きていく女性達の姿が印象的だった。2022/06/18
松本直哉
30
ロリータの本名ドロレスがスペイン語で苦痛を意味することの重い意味、ロリータの視点から小説を読む意味、それは、この書物を禁書にしておきながら、法定結婚年齢を18歳から9歳に引き下げ、少女との結婚になんの躊躇もないイスラム共和国で、ミサイルとミサイルの間にジェイムズを読み、アメリカに死をという喚声を聞きながらグレイトギャツビーを読む彼女たちこそ、切実に理解できるのだろう。文学が役に立たないなどと誰が言ったのか。彼女たちにとって文学こそがが生きるための糧、想像力という名の武器をもつ手段だったのではないだろうか。2021/11/03
Nobuko Hashimoto
25
テヘランでロリータって?と以前から気になっていた本。『読書会という幸福』で(やや否定的に)触れられていて、さらに気になっていたところ、東欧やロシアの本を読む演習で学生が関連本として紹介してくれて、今でしょ!と。抑圧のなか危険を冒して本を読み、作品や自分たちの人生について語り合う女性たちの集まりに羨ましさすら感じました。🙆♀️でした! 詳しくはブログに。https://chekosan.exblog.jp/32818895/2023/01/24
てつや
17
アメリカから祖国イランに戻った女性英文学者が綴ったノンフィクション。時はイラン革命後の混沌とした国。 英米文化への迫害、どんどん制限される女性の権利。 増加する検閲、逮捕拘束、公開処刑。 そんな過酷な状況のなかで、女子学生を集めて英米文学の秘密の読書会を開いた著者が経験したものが描かれていく。 私たちの国が、こうならない保証はあるのだろうか。 私たちには何ができるのだろう? 答えの出ない問いが、頭の中をグルングルンと回ってしまいます。 ぜひ、ご一読を!2017/01/27