出版社内容情報
ゴワサンで願いを叶えても、ええじゃないか! サムライから狂言作者に転身しようと夢みる男をめぐる、幕末大河エンタテインメント。抱腹絶倒、痛快無比な時代劇。
〈一両分の時間の間、ガセもまじえて聞かせましょう。私というニンゲンの狂言がそれでゴワサンなるやならざるや。〉(本文より)
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江戸が明治にかわる頃、ニッポン人同士による(多分)最後の戦争がダラしなく終わろうとしていた──官軍と旧幕軍(彰義隊)がぶつかりあうなか、そこに現われたる新撰組残党〈山出灰次〉。もとはと言えばこの男、サムライを目指して寒村から出てきたのだったが、その戦場にて、同じく武士志願でともに故郷を後にしたものの離ればなれになっていた弟の〈黒太郎〉や、吉原に売られていった幼馴染みの〈お吉〉と、運命的な再会を果たす!! という舞台の幕開きは、狂言作家にあこがれるあまり侍分をも捨てちまった〈加瀬実之介〉が紡ぎ出したお話らしい。そしてその「物語」は、鶴屋南北や河竹黙阿弥、井伊直弼らを巻き込みつつ、贋金作り、仇討ち、紅毛歌舞伎などのエピソードも巧みに織り込んで、怒濤のごとくつき進んでゆく……。
ゴワサンで願いを叶えても、ええじゃないか! 「サムライから/への転身」を夢みる男たちをめぐる、かぶきっぷりのいい幕末大河エンタテインメント。虚構と現実のはざまで葛藤するニンゲンの「リセットぶり」を描いた傑作。
松尾 スズキ[マツオ スズキ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内藤銀ねず
9
戯曲本の感想を書くということは、観劇の感想にもなるという発見。今更ながら読書メーターの意外な使い方に驚いているところ。以前観たお芝居もここに書いてしまおう。内容としては故・十八代目中村勘三郎主演の前作『ニンゲン御破産』の改作版。とはいえもはや別物。岡田将生はとにかく美しいし、多部未華子はとにかくたくましいしで、見せ場が多くて「嬉しい悲鳴」の方の忙しさ。あとがきに前作と勘三郎の思い出が綴られていてステキ。2018/06/13
空のかなた
4
観劇したものの、余りに展開と台詞が想定を越えたスピードだったため消化不良になり購入。これまで、戯曲は避けてきましたが、これは読んで正解。15年ぶりの再演だったことや、そのときは「御破産」だったことを初めて知る。巻末の松尾スズキのあとがきを読むことで、科白と原作者の思いと台本が繋がり、すっきり。お吉の台詞「戦でお化けになるのはやめろ。それより、この子がどうすれば幸せになるか、あんたなりに考えろ!これが、お願いしますのお吉の最後のお願いだ。」お吉の台詞が、やっと理解できました。素晴らしい舞台でした。2018/07/02
法水
3
『ニンゲン御破産』から15年、『ニンゲン御破算』として生まれ変わった戯曲。サイン本を劇場にて。上演を観てから戯曲を読んだのでどうしても戯曲単体での評価というのが難しいが、改めてこれだけ数多い登場人物をバランスよく配置し、テンポよく物語を進めていく手腕に感心する。ところで第二幕の冒頭、黒太郎が「村で初めて鬱って漢字を空で書いたのも俺だ」の部分、てっきり「撃つ」かと思っていたのは私だけだろうか…。2018/07/02
縄文ねぇさんこはる
2
松尾スズキは読んでるだけで、演劇の舞台を想像できる。そりゃ、戯曲だからだろうってツッコミの声も聞こえるが、想像できない戯曲はこの世にたくさんある。 やっぱり松尾スズキはすごい。2023/09/25
だんいん
2
哀しさと痛快さと笑いが複雑に絡み合っていて、読むだけでも面白かったけれど誰が誰だか途中でややこしくなりました。でも実際に観たらわかりやすく楽しめる配慮がなされている気がするから、やはり演劇は実際に観るのが最高なんだと思いました。2019/04/12