出版社内容情報
明治時代の「現代演劇」だったキワモノ歌舞伎。多彩な資料をひもときながら、名優五代目菊五郎が演じ続けたキワモノ歌舞伎を追体験・再評価し、明治という時代を生き生きと描く。 橋本治氏推薦! 「五代目尾上菊五郎は、本当に素敵な人だ。この本のタイトルからするとぶっ飛んだ人のように思えるが、「ぶっ飛んでる」と言われることを怖れない、本当の名優だ。そのひっくり返った素晴らしさを堪能してほしい。」 赤江瀑氏絶賛! 「歌舞伎に、或いは国立劇場に、こうした秀でた表現者(=矢内氏)が存在することが頼もしい。」
目次
はじめに 人悦ばせの菊五郎
第1章 散切り頭と神経病
第2章 明治の闇には悪女がいる
第3章 見世物は世界をひらく
第4章 軍服を着た菊五郎
結び たんすのひきだし
著者等紹介
矢内賢二[ヤナイケンジ]
1970年徳島生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。日本芸術文化振興会(国立劇場)勤務。専門は日本芸能史、文化資源学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みつひめ
3
團十郎の活歴については、さまざまな文献で触れられているのを読んだことがありましいたが、菊五郎のキワモノについては、初めてまとめて語られた本のようです。五代目菊五郎って、ステキな役者だったんだなぁ〜というのが、伝わってきました。そして、歌舞伎がよくも悪くも生き生きと動いていた時代があったからこそ、今の歌舞伎があるんだろうなと。2009/05/19
ちゃかぱん
1
・反髪頭を叩いてみれば、因循姑息の音がする。 総髪頭を叩いてみれば、王政復古の音がする。 散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする。 (本文より)2010/03/20
zatugei
0
明治期の前半、書生芝居・壮士芝居が出現する以前の歌舞伎の世界。江戸時代を引きづり見世物と同じ地平で芝居が作られていた。散切り頭、廃刀令、西洋からのサーカスや気球乗りなどの舶来の見世物など、新時代の出来事に対応して演じられた芝居についての論考。九代目團十郎の活歴は演劇史にも登場するが、五代目菊五郎の「キワモノ歌舞伎」は初めて知った。2017/04/17
mamiko_w
0
明治時代の歌舞伎というと「天覧歌舞伎」「活歴」とかあまりおもしろくなさそうなイメージだったのだが間違っていたらしい。江戸時代と地続きの、見物をあっと言わせ続けた「見世物の親玉」である「歌舞伎」にワクワクさせられた。そして新しいものと古いものが渾然とした明治時代そのもののおもしろさ。またなんといっても五代目菊五郎という役者の魅力的なこと!「素走っこい人悦ばせの菊五郎」の評判どおり、どんな役でも嬉々として演じている五代目菊五郎の姿が目に浮かぶようだった。2013/05/02
wasuregai
0
歌舞伎が古典芸能と化す直前の頃のお話。「活歴」「キワモノ」共に歌舞伎の歴史では否定されがちだけれども、時代背景と共に観ていけばこれはこれで面白い。今の歌舞伎もたまには明治の「キワモノ」復活させればいいのに(確実に不入りそうだが・笑)。あと、五代目の「キワモノ」を追っていて、現・勘三郎の目指したい方向がなんとなくわかるような気もした。2010/08/12