- ホーム
- > 和書
- > 芸術
- > 芸術・美術一般
- > 芸術・美術一般その他
出版社内容情報
本書の冒頭は「誰のことだね、という人もあるだろう」という一文で始まる。「名前の読みからして難しい。そこはミズシマ・ニオウと言えば済むにせよ、その先、誰かというのを、さて、どう答えたらよいものか」と謎めいた問いかけで著者は続ける。
明治・大正・昭和にわたり、文学・美術の分野に大きな足跡を残しながら忘却の彼方に消し去られた畸人の魅力を、十年の歳月をかけて調べ上げ、執念と使命感を深くして掘り起こしたのが本書である。
爾保布とは誰かを明かすため、著者は周辺の人物を探っていく。たとえば「日本のビアズリー」と称された爾保布が、谷崎潤一郎『人魚の嘆き・魔術師』の挿絵と装幀を手がけたこと。長谷川如是閑に大阪朝日新聞の記者として迎えられ、画文ともに活躍する場を与えられたこと。また鬼才中の鬼才武林無想庵とは生涯の悪友として付き合ったり、門弟三千人といわれた文壇の大御所佐藤春夫の媒酌人も務めたり、同じ旅好きの岡本一平らと漫文『東海道漫画紀行』を刊行したり等々……。
自ら世間の梯子を降り、四方八方に才知を蕩尽し、諧謔と反骨に生きた姿を、畏敬の念とともに現代に引き戻す。
内容説明
日本のビアズレーとも呼ばれる異端の画家、同時に碩学を誇らぬ稀代のコラムニスト。明治・大正・昭和にわたり、四月八方に才知を蕩尽、あえて梯子を降りて埒外に生き、遂に忘れ去られた東京人の魅力を、芸術選奨新人賞受賞の第一人者が掘り起こす。
目次
根岸、不思議ね 追憶の家郷
この父の子 父の履歴と幼少時代
二兎の徒に 美術学校と詩心の目覚め
鳩よ、見やる闇夜とは 児童文学と従軍
意地もひもじい 美校卒業と結婚
黄泉の季節、鬱積の御代「新文芸」の頃
暗い快楽 明治の終焉、デカダンの日々
異端、変態「モザイク」と行樹社
長旅、延びたがな 新潟から関西彷徨へ
居場所なし、よしなよ芝居 美術劇場と「モザイク」の終焉
軽やかさ、大阪やろか 大阪朝日新聞へ
社が多才さ耕し 大阪朝日での仕事
字に黒し、真白く虹 白虹事件と大阪朝日退社
醒めとったまま、また勤めさ 東京日日新聞の頃
とかくに一言、皮肉かと「根岸より」
如何はせん、現世は瓦解 関東大震災の前後
なんか槌音、落ち着かんな 帝都復興と中国趣味
どんなもんだ、奇談も何度 児童文学と水島家
委細見物、雑文掲載 満韓遊覧と円本ブーム
徒食、閑談、書くよしと 漫画家仲間と「食道楽」グループ
ニヒル、淡々、暗澹たる日に「大日」のコラム
屈む、かじかむ画家 日中開戦の頃
国もヨタ、四方に苦 近衛新体制の時代
遁世、敗戦と 太平洋戦争と新潟疎開
雪に消ゆ 新潟隠棲と晩年
著者等紹介
前田恭二[マエダキョウジ]
1964年山口県山口市生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業後、読売新聞社入社。東京本社文化部部長などを経て、2021年武蔵野美術大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。