内容説明
神話や伝説を自由に変奏した9つの物語からきこえてくる、“或る内的危機の報告書”。
著者等紹介
ユルスナール,マルグリット[ユルスナール,マルグリット] [Yourcenar,Marguerite]
1903‐1987。1903年ベルギーのブリュッセルで、フランス貴族の末裔である父とベルギー名門出身の母との間に生まれる。本名マルグリット・ド・クレイヤンクール。生後まもなく母を失い、博識な父の指導のもと、もっぱら個人教授によって深い古典の素養を身につける。1939年、第二次世界大戦を機にアメリカに渡る。51年にフランスで発表した『ハドリアヌス帝の回想』で、内外の批評家の絶賛をうけ国際的な名声を得た。68年、『黒の過程』でフェミナ賞受賞。80年、女性初のアカデミー・フランセーズ会員となる。87年、アメリカ・メイン州のマウント・デザート島にて死去
多田智満子[タダチマコ]
東京女子大学・慶應義塾大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mikky
13
主にギリシャ神話に材を取った短編集。ただここに描かれているのは古代の人物とは思われません。その証拠に現代的なものがオーパーツのように忍び込まされており、本当はよく知る誰かにあえて神話の人物の仮面を被せているのではないかと——そんな印象を受けます。 この作品を書いた頃、作者は報われない恋に身を費やしていたとされます。確かにその博識さと硬質な文章で極めて冷徹なイメージを持つユルスナールが、度を失っている感触がひしひしと伝わります。けれどそれがまた美しい文学になっているというのが…感嘆以外の何物でもありません。2023/05/31