出版社内容情報
光州事件、釜山アメリカ文化文化院放火事件と五人の女性の生き方を通して、今を生きる・過去を理解する・未来を思うことを描く長篇。
内容説明
光州事件、釜山アメリカ文化院放火事件からの時間を、歩きながら思索し、つながりあう五人の女性たち。今を生きる・過去を理解する・未来を思うことを重層的に描く。
著者等紹介
パクソルメ[パクソルメ]
1985年、韓国・光州広域市生まれ。韓国芸術総合学校芸術経営科卒業。2009年に長篇小説『ウル』が「子音と母音」新人文学賞を受賞してデビュー。「完全に新しい、見たことのない小説」と評価された。14年、「冬のまなざし」で文学と知性文学賞、短篇集『じゃあ、何を歌うんだ』でキム・スンオク文学賞を受賞。19年、キム・ヒョン文学牌を受賞。21年、『未来散歩練習』(本書)で東里木月文学賞を受賞
斎藤真理子[サイトウマリコ]
翻訳家。パク・ミンギュ『カステラ』(共訳、クレイン)で第一回日本翻訳大賞、チョ・ナムジュ他『ヒョンナムオッパへ』(白水社)で“韓国文学翻訳院”翻訳大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
52
こちらも際立ってユニークな作品ではあるが、特異空間と呼びたくなるほど異彩を放っていた短篇集『もう死んでいる十二人の女たちと』と比べると確かに柔らかくて読みやすい。一種のフラヌール小説と言うべきか。文字通り散歩するように場所や時間を超越する語りは、本来なら読みにくく混乱を来すはずなのに、不思議なくらい心地良い。揺蕩うように読んでいて、気が付いたら最後の一ページだった。テッド・チャンの「あなたの人生の物語」で描かれていた異星人の言語と思考を思い出す。天才的作家による世界観。とても良かった。2023/07/05
ケイティ
26
難解というか、つかみどころがないというイメージのパク・ソルメさん初読み。そもそも今作は読みやすいようですが、齋藤さんの訳が素晴らしい。少し混乱しながらも、繊細だが強く濃密な文章力に浸りながら読了。釜山アメリカ文化院放火事件を背景に、その関係者との間接的なかかわりを持つ人々の物語。中学生のスミと、作家を志し釜山とソウルの二拠点生活を送る「私」のシームレスな物語は、決して交差しないのに、光州事件から続く激動の韓国で、一歩ずつ人生を進めていくひたむきさを感じた。齋藤さんのあとがきも秀逸でした。2023/08/16
星落秋風五丈原
26
頻繁に出てくるのが光州事件とアメリカ文化院放火事件。二つの物語が並行して進む。「私」は『チボー家の人々』を心の拠り所にし、ジャックの存在を自身の内にあたたかく感じ取る。2023/07/28
shoko
20
韓国の歴史的事件を題材としつつ、5人の女性の二つの物語が循環する作品。事件はあくまで直接は関わりのない2人の女性の目を通して間接的に、散歩するように揺蕩う意識の流れを追うように描かれる。女性たちの生き方に共感したりお腹が空いたりしながら読み進めるも、韓国の歴史に疎い私には特に放火事件にかけた学生たちの朝鮮の未来を民族の手で決めたいという熱い思いが印象に残った。「来てほしい未来を思い描き、手を触れるためには、どんな時間を反復するべきなのか」という作者の問いかけが木霊する。韓国文学いずれもっと読みたい。2023/08/30
Kanako
18
今を生きる自分たちの道が、過去の苛烈な事件を生きた人たちから続く道だということを思い出させてくれる物語。そして今は未来の道を創造するための練習の時間であると。大きなスケールを闊歩する物語ではあるけれど、散歩というタイトルのとおり、その足取りは軽やかである。何か巨大なメッセージを伝えるものではなく、あくまで個々人の小さな、それでいて尊重されるべき歩みを伝えてくれる。2024/10/25
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