出版社内容情報
文化大革命の時代、父と息子の13年間にわたる船上生活と、少女への恋と性の目覚めを、少年の視点から伝奇的に描く。中国の実力派作家による、哀愁とユーモアが横溢する傑作長篇!
内容説明
文化大革命期を背景に、父と息子の13年間にわたる船上生活と、少女への恋と性の目覚めを、少年の視点から伝奇的に描く。中国の実力派作家による、哀愁とユーモアが横溢する傑作長篇。マン・アジアン文学賞、中華文学賞、華語文学メディア大賞受賞作品。
著者等紹介
蘇童[スートン]
1963年、蘇州生まれ。80年に北京師範大学入学、在学中から詩や小説を書き始める。中篇『一九三四年の逃亡』(87年)で注目を集め、同時期に同じ傾向をもって登場した余華、格非らとともに「先鋒派」と呼ばれる。中篇『妻妾成群』(90年)は張芸謀監督によって映画化され(邦題『紅夢』)、同じ作風の『婦女生活』(90年、『ジャスミンの花開く』として映画化)と『紅粉』(91年、『べにおしろい』として映画化)も話題を呼ぶ
飯塚容[イイズカユトリ]
1954年北海道札幌市生まれ。東京都立大学大学院博士課程満期退学。中央大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
りつこ
27
いかにも中国らしい過剰な物語。不自由で回りのひとたちの監視が厳しくて罵倒や蔑みも過激で、こんな国で暮らすのはきっついなぁ。莫言に比べてユーモア控え目なので読むのが辛かった。性の目覚めを許さずスポイルする父親も酷いが、主人公の行動も非常にグロテスク。唯一輝きを放ってたのは、孤児だけどその美貌と頭のよさでのし上がる少女。その傲慢さ故に出世出来ないけど、強かさと逞しさは痛快だった。それにひきかえ主人公ときたら…。 最期は魚になるしかないようだ…。2012/06/16
ハチアカデミー
18
B+ 言葉と歴史に縛られ、翻弄される親子の物語。烈婦の息子といわれ、孤児でありながら街の指導者となった文軒は、ふしだらな下半身生活の暴露をきっかけに失脚してしまう。同時に、尊敬の対象から唾棄すべき存在となってしまった息子は空屁(すかしっぺ=「空」よりも空虚で、「屁」よりも臭い)とあだ名をつけられ、鬱々とした生活を送るようになる。出生を知らぬ父をもつ以上、自分の存在こそが空虚であると捉えた少年の成長譚。不条理文学の系譜ではあるが、悲劇的な物語にもかかわらずとかくコミカル。過剰なのだ、言葉が、行動が!2012/03/28
三柴ゆよし
16
「河岸」ではなく「河(と)岸」。革命烈士の血統を疑われ、下半身の問題から船上生活に追いやられた元共産党幹部の父子と、彼らを嘲り虐げる陸地の人びと。その対置構造を軸として、残酷と滑稽が相半ばする不思議なテンションを維持しながら、物語は流れていく。想像していた以上に重厚な小説であり、莫言をガルシア=マルケスに例えるなら、蘇童はむしろバルガス=リョサかもしれない。非モテ男(あるいは去勢者)の屈折した青春を描いているところも、リョサ「子犬たち」や、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオ』に通じるものがあるだろう。2012/02/16
ののまる
9
文革背景もよくわかるんだけど、どこにも感情移入できるポイントが私にはなくて、しんどかったです… 中国のど田舎で凄まじい非衛生なトイレを何度も利用したことがあるけど、その想い出が何度も現れてきて、この暑さのなかでつらい読書であった…2020/08/15
星落秋風五丈原
8
両親は揃っているものの孤児のような庫東亮と、正真正銘の孤児・慧仙は、合わせ鏡のような存在だ。日本的な小説ならば、同じ境遇の二人はどこか惹かれあい…となるが、中国はそれほど甘くない。真面目にやればやるほどドツボにハマり、挫折を繰り返す庫東亮に対して、自意識過剰な慧仙は他人と相いれないが、挫折にめげずに突き進む。映画化作品『ジャスミンの花開く』でも描かれた蘇童の強いヒロインの系譜を受け継いでいるといえよう。今回は庫東亮の側から描いたが、慧仙の側から同じ場面を描くと全く違う物語が描けるのではないか。 2013/07/21




