出版社内容情報
故郷喪失者のイタリア人移民の苦難の歴史と、アルゼンチン軍事政権下の悲劇が交錯し、双子の料理人が残した指南書の驚嘆の運命、多彩な絶品料理、猟奇的事件を濃密に物語る異色作!
内容説明
故郷喪失者のイタリア人移民の苦難の歴史と、アルゼンチン軍事政権下の悲劇が交錯し、双子の料理人が残した『指南書』の驚嘆の運命、多彩な絶品料理、猟奇的事件を濃密に物語る。「アルゼンチン・ノワール」の旗手による異色作。
著者等紹介
バルマセーダ,カルロス[バルマセーダ,カルロス][Balmaceda,Carlos]
1954年、アルゼンチン、マル・デル・プラタ生まれ。国立マル・デル・プラタ大学卒業。スーパーマーケットチェーンの雑誌の編集長をしながら執筆活動を開始。1985年、短編集『もうひとつの死』La otra muerteを出版。アルゼンチン作家協会賞と翌年の文化省国民文学賞を受賞。2000年、『透視者の祈り』La plegaria del videnteがプラネタ社小説賞最終選考まで残る。のちに出版され、ヒホン・ノワール週間シルベリオ・カニャーダ記念賞を受賞
柳原孝敦[ヤナギハラタカアツ]
1963年鹿児島県名瀬市(現・奄美市)生まれ。東京外国語大学大学院博士後期課程満期退学。博士(文学)。東京外国語大学大学院准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
96
最近、観た『パフューム ある人殺しの物語』の愛からの断絶と円環を思わせるラストで急に読みたくなったのは原作ではなく、この本。そして一昨日、参加した和歌山オフ会での「美味しい」というテーマで真っ先に浮かんだ本がこの作品でもあります。とは言え、最初の一文でこの本にドン引くか、喰いつくかで分かれてしまうのですが(^^;)でも描かれる料理は本当に美味しそうなんですよ・・・。特に五感を刺激される調理中の描写は料理が好きな人には堪らんかと。後、料理はエロス絡みの縁を結ぶんだなと物騒な描写の中でしみじみと感じ入る。2018/06/16
あも
95
物語の醍醐味ってなんだろう。出来ない経験を仮想体験する…という事なら、禁忌に触れるのは最たる物の一つ。アルゼンチンはブエノスアイレスにある料理の天才双子が作ったレストラン。その歴史は関わった人々の喜びと戦争が産む悲劇に彩られている。冒頭の衝撃的なシーンの後、登場人物が増える度に紹介される人々の家系にやや混乱したが、物語は最後に一人の男に収斂する。セサル・ロンブローゾ。生来的犯罪人説を唱えた学者と同じ名を冠された彼が、この食堂の歴史の最後を飾る。美食と愛と狂気。結末はこの物語に相応しい爛れた美と共にあった。2019/05/28
財布にジャック
74
もう、一行目からノックアウトされました。ネタバレするのが怖いので、詳しく書けないのが残念ですが、確かに「暗黒小説の名にふさわしい。」という訳者の後書きどおりの内容でした。序盤で怖そうだから、止めたほうがよいんじゃないかと思いながらも、引き込まれる文章で、その熱さに巻き込まれてしまい、ぐいぐいと一気読みしてしまいました。実を言うと、こういう恐怖は個人的には不得手なんですけど、客観的に言えば、凄い本であることは間違いないです。なんか今晩うなされそう…です。2012/02/23
コットン
70
藤月はなさんのオススメ本。一頁目から衝撃的な話が最後にこうなったかと考えさせられるダークな展開。それとは別に実際にあったら見てみたいと思わせたのはカリオストロ兄弟の魔法の料理本『南海の料理指南書』の原本(悦楽の手稿集):カリオストロ兄弟が入念に書いたルネサンス期のヴェネチアの書字生のような文字や手書きの繊細なデザインに水彩絵の具で色付けした絵で例示されたレシピ。豊富な参考文献(古い料理書の痕跡、ヨーロッパの旧邸ではかない名声をほしいままにした見事な料理の考案者たちについての豊かな言及)など。2018/06/23
白のヒメ
55
80年以上に渡るブエノスアイレス食堂の歴史。どんな一族がこの食堂を経営しどんな時代を過ごしてきたのか。料理を極めるということ、食を極めるという事がどういうことなのか、狂気が突き止め向かった最後の行先に驚愕しながらも、物語的には綺麗に落ちがついたのかと思ったり。けれどしばらく外食はしたくなくなりました。2015/11/08