内容説明
ボルドーの迷宮に足を踏み入れ、その虜となった実業家ウィルバーフォース。あるワイン蒐集家と知り合い、古い屋敷と膨大なコレクションを受け継ぐことになるが、そこには驚くべき悲劇が待ち受けていた…。四つの「ヴィンテージ」を遡りながら、苦いユーモアに満ちた語りで明かされる人生の浮き沈み。
著者等紹介
トーディ,ポール[トーディ,ポール][Torday,Paul]
1946年、ハンガリー人の父とアイルランド人の母の間に生まれる。オックスフォード大学ペンブルック・カレッジで学ぶ。処女作『イエメンで鮭釣りを』は、2007年に出版されるやたちまち評判を呼び、一躍ベストセラー作家となる
小竹由美子[コタケユミコ]
1954年東京生まれ。早稲田大学法学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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蘭奢待
50
久しぶりに面白い小説を読んだ気分。自分で興した会社を売却し、かわりに10万本のビンテージワインを蔵ごと手に入れたウィルバーホース。ワインを巡り、会社、同僚、健康、妻、友人を次々と失い、とめどもなく沈んで行く。時間を遡るかたちで物語は巻き戻って行くが、その時々の人生の浮沈や、英国の上流階級の生活の描写が巧妙でとても面白く読めた。 作品中に中毒症状と、それから脱するために努力するくだりがあるが、にもかかわらずこの作品を読んでいるとビンテージワインが味わいたくてしょうがなくなるのが困る。2020/05/13
タカラ~ム
21
#白水社祭 として書評サイト「本が好き!」で開催中の掲示板企画に投稿するために過去レビューノートから引っ張り出してきた。世の中にはいろいろなマニアがいて、趣味を突き詰め過ぎると身を滅ぼしかねない勢いの人もいるが、本書の主人公ウィルバーフォース氏もそんなマニアのひとり。彼が取り憑かれたのはワインだ。会社まで売却するほどにワインの世界にはまった彼は、我が身を滅ぼすまでその趣味にのめり込んでいく。何事もほどほどがちょうどいい。2017/05/21
星落秋風五丈原
12
ワインはあけてしまったらその時から少しずつ発酵し始め、最後はとんでもない匂いを発する。それと同じように、ウィルバーフォースもある時パンドラの箱を開けたように友情、恋愛、そして生涯を賭けるに足る存在を全て見つけたその時から、少しずつ崩壊に向かってゆく。これほど主人公に底意地の悪い作品も珍しい。2013/04/04
りつこ
12
面白かった!前半はアル中…もとい、ワインに魂を奪われてしまった男の悲劇として「あなおそろしや」と読んでいたんだけど、時系列を遡っていくにつれ、彼が運命に足を絡めとられていく様や希望を抱いた瞬間が明らかになっていって、物語のラスト(つまりはそれが物語の始まりでもある)には涙…。結末がわかっているだけに苦い気持ちになるのだが、それだけではなく、なんだかちょっと笑えて少しだけ明るい気持ちにもなれるのが、この小説の魅力。こういう小説が読みたくて本を読んでいるのだ、としみじみ思った。2010/09/29
niaruni
11
「君が組み立てられたときに何か部品が抜けてたんだ」と友人に言わしめるウィルバーフォース。たぶん、その決定的な欠落が彼の身に不運を招き寄せているのだろうけれど、当人はとんとわかってない。それがなんとも哀しくて、なのにこの作家の手にかかると、そこにほのかなおかしみが加わる。ポール・トーディ、しばらく目が離せない作家になりそう。2010/10/02
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- GoodsPress2022年10月号