内容説明
46歳、無職、つい最近、彼女に捨てられた。どこにも居場所がない…。頭に浮かぶのは、「人生の面妖さ」をめぐる妄想ばかり。重いけれど軽やかな、「靴男」の果てしないモノローグ!“ビューヒナー賞”受賞作品。
著者等紹介
ゲナツィーノ,ヴィルヘルム[ゲナツィーノ,ヴィルヘルム][Genazino,Wilhelm]
1943年、ドイツのマンハイム生まれ。ギムナジウム(中等高等学校)を中退し、17歳の頃からジャーナリズムにかかわる。30代になって高校卒業資格を得て、40代の前半にフランクフルト大学でドイツ文学、社会学、哲学を学ぶ。ラジオドラマの執筆、フリージャーナリストとして活躍しながら、数多くの小説を発表する。長い間、ごく一部の読者にしか知られていなかったが、『そんな日の雨傘に』がテレビの文学番組で絶賛されたのをきっかけに、一躍脚光を浴びる
鈴木仁子[スズキヒトコ]
1956年生まれ。名古屋大学大学院博士課程前期中退。椙山女学園大学准教授。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紅はこべ
102
勤勉なイメージの強いドイツ人のまさかのキャラの主人公。ボーヴの主人公とも違う。何故か性欲だけはある。存在許可のない人生って初めての概念。〈人間にはもともと精神の病への傾きがあるのだ、自分たちはただ正常を演じているのにすぎないのだ〉怖い、怖い。女にもそこそこモテるし、仕事のオファーもあるし、まともに生きていこうとすればできる人なのに。なんにもしない人って、世界的風潮なのかな。2019/10/12
新地学@児童書病発動中
96
カバーの美しい写真が、この物語の内容をうまく表現している。地に足をつけないで、雨の中二つの椅子の上に立つ男。一応傘をさしているが、不安定で倒れそうだ。この物語の主人公も宙ぶらりんの状態で、街を徘徊して色々な独白を延々と述べる。靴の履き心地を試すという彼の仕事が象徴的だ。つまり自分の足で立つための物が、この男は定まっていないのだ。それでもなぜか女性には好かれる性質で、女友達の数は多い。一人の女性は経済的な援助さえしてくれる。頼りない感じが女性の母性本能をくすぐるのだろうか。(続きます)2017/11/23
藤月はな(灯れ松明の火)
66
主人公は高等教育を受けているが働く意欲がなく、靴屋の試作品の靴を履かせてもらい、その靴の履き心地を文章にしようとしているが書けない。また、46歳だが女にはモテているのでその内の一人、リーザに経済的にお世話になっている。そして「自分は許可していないのに世の中に生まれてしまった」とずっと悩み続けてもいる。ぶっちゃけて言うとインテリであるが故に思考が非常にめんどくさくてウザい、ヒモ男なのだ。そんな彼に愛想を尽かしてリーザが出て行ったことで主人公は街を彷徨いつつも過去や女たちを振り返る。御託ばかり抜かすんじゃねぇ2016/06/03
南雲吾朗
59
靴の試し履きをして生計を立てている男の話。彼は自分に存在許可を与えない。人物像は感受性が強すぎて、万事を深慮しすぎる。風に舞う飴の紙屑さえ長時間眺めて思慮してしまう様な人間。「挫折したまま生き続けることには慣れている。」社会とうまくいく事を拒んで生きてその生きづらさに悩みながらも、徐々に社会とうまくやっていく様になると、自分自身を裏切ってしまっている気分に陥るというちょっと難ありな性格。平たく言ってしまえば、臆病で僻みっぽく物事を素直に受けずに被害妄想的に生きている人間。何故か共感してしまう自分が悲しい。2019/06/27
かもめ通信
20
どうしようもないダメ男が、一人称で、時に詩的に、時に哲学的に、のべつ幕なし語り続ける世界にどっぷりつかると、なぜだか元気になってくるから不思議です。2019/07/15