内容説明
『ダンダン』―俺はダンダンから薬をもらおうと、農場まで出かけた。しかしダンダンは、銃で知り合いを撃ってしまったという。ブレーキの効かない車で、死にかけた男を医者まで送り届けるドライブが始まった。『仕事』―俺はホテルでガールフレンドとヘロインを打ちまくっていた。喧嘩をした翌朝、バーで金儲けの話に乗ることにした。空き家に押し入り、銅線を集めて、スクラップとして売る仕事だった。『緊急』―俺は緊急治療室で働きはじめた。ぶらぶらするか、雑役夫と薬を盗むしかなかった。深夜、目にナイフが刺さった男が連れられてきた。手術の準備中、雑役夫がそのナイフを抜いてしまった。最果てでもがき、生きる、破滅的な人びと。幻覚のような語りが心を震わす、11の短篇。
著者等紹介
ジョンソン,デニス[ジョンソン,デニス][Johnson,Denis]
1949年、旧西ドイツ、ミュンヘン生まれ。デビュー以来、核戦争後の近未来や、暴力とドラッグに染まった現代アメリカ社会の裏面を精力的に描きつづけている。最新長篇Tree of Smoke(『煙の樹』)で「全米図書賞」を受賞、「ニューヨーク・タイムズ年間最優秀図書」にも選ばれる
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年生。東京大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
67
お気に入りの方のレビューで気になり、今の気分に近いかもと読むが、かなりダウナー系っぽい雰囲気で、お酒もあまり好きじゃない自分とは随分遠かった。終始血を流していることに気づかずふわふわヘラヘラふいにグッとくる、といった風の連作(?)短篇集。ラストは前向きに、なのだが、「甘美に憐れむ思いで一杯」と語る主人公に何か天地をひっくり返されるような気になり、結局のところ彼は何も変わってはいないのではないかと思わされる。良い意味で。「俺たちのささやかなねぐらは安物の宝石みたいにキラキラ光って見えた」そういうの好きよ。2023/04/12
こばまり
59
惨めで美しい小説ジャンルの白眉に思う。レイモンド・カーヴァーを夢中で読んだ頃を思い出した。タイトル作は99年に映画化もされていてキャストにはジャック・ブラックの名も。悪ノリコメディになってなきゃいいが。2019/10/26
ヘラジカ
56
ダメ人間たちが社会の底でぐちゃぐちゃな生活を送っていて、そこには綺麗な”物語”なんて欠片も存在しないのに、どの作品も鈍色の空からエンジェルスラダーのように一筋の光芒が差している。それは思わず息をのんでしまうくらいに美しい。時たま抜き身の刃のような言葉にも触れて心拍数が上がった。恐るべき短篇集。今では十年以上続いている世界文学シリーズ「エクス・リブリス」の記念すべき一冊だが、凄い本を選んだものだと改めて感心した。2023/01/18
Vakira
54
なにこの題名「神の子」?この題名コーマック・マッカーシーの「チャイルド・オブ・ゴッド」と同じことじゃん。とすると「神の子」とは「神は不平等で全能の神などいない。おそらくは神に知性はない」的?そうだ。自分の意思に関係なく自分を生かしているのは知性のない神だ。つまりは生物的欲望、本能、あるいは煩悩の様なものか。俺?俺は仲間からファックヘッド(ド阿呆)って呼ばれてる。いかれポンチだ。そうそう善悪なんてないよ。俺を動かしてるのは俺の純粋な欲望。ドラッグと酒代稼ぐために辛うじて仕事してるが盗みだってやるさ。2020/09/09
ちゅんさん
45
出てくるのはぼぼ全員最低でろくでなし。なのになぜか純粋で美しさすら感じる。社会の底辺で破滅的に生きる人たちを書いた圧倒的なパワーを持った小説。こういうのあまり好みではなかったがこれはとてもいい。2019/06/15