出版社内容情報
時代に翻弄され、苦闘の末に名声を得たあとも、孤独に苦しむ──数多くの書簡やメモを徹底的に分析し、真の姿に迫る決定版評伝。大彫刻家の真の姿に迫る決定的評伝
ロダンはおそらく世界でもっとも著名な彫刻家であろう。だが、その生涯については、ロダンと直接親交のあった人々の言説によって、文学的要素、私的感情に強く色づけされ、実像とはかなり隔たって伝えられてきた。1970年代、それまで閉鎖的だったパリのロダン美術館は、方針を転換して、自館のアーカイヴを研究者に公開した。記録魔だったロダンは、膨大な数の書簡やメモ、新聞雑誌記事など、あらゆる文書を遺していた。著者は何年もかけてそれらの資料に目を通すと同時に、同時代の証言を丁寧に拾い上げ、ロダンの真の姿を鮮やかに浮かび上がらせた。
早世した姉への深い愛情、徒弟時代の苦闘、《地獄の門》の注文を得た経緯、革新的な作風とスキャンダルの数々、カミーユ・クローデルとの愛憎、名声を得てさらに深まる孤独感、複雑な女性関係、国家への全作品の寄贈──本書によって、これまで歪められていた事実が修正され、新たな事実が多数明らかにされた。天才ロダンは、当時の政治や社会背景なくしては生まれなかった。ロダンを軸とする美術史の書であると同時に、フランスの社会史にも光をあてた本書は、広範な読者にとって魅力ある一冊である。
ルース・バトラー[バトラー]
1931年生まれ。英国ハル大学特別研究員、マサチューセッツ大学名誉教授、ロダン美術館学芸顧問を歴任。1966年に博士論文で「ロダンの初期作品と背景」を発表以後、ロダンおよびフランス近代彫刻と、アメリカにおける受容を研究対象としている。資料の原典にあたるという実証的な研究姿勢は「ロダン展望」(Rodin in Perspective, 1980)のような著作をはじめ、本書『ロダン 天才のかたち』にも一貫している。ロダンの芸術を人と総体で扱う研究者として、ロダンの母国フランスでも認められる第一人者。
馬渕 明子[マブチ アキコ]
独立行政法人国立美術館理事長、国立西洋美術館長。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学大学院、パリ第四大学大学院博士課程で美術史を学ぶ。東京大学助手、国立西洋美術館主任研究官、日本女子大学人間社会学部教授等をへて2013年より現職。著書に『美のヤヌス テオフィール・トレと19世紀美術批評』(スカイドア)、『ジャポニスム 幻想の日本』(ブリュッケ)、『美術とジェンダー2 交差する視線』(共著、ブリュッケ)など。
大屋 美那[オオヤ ミナ]
国立西洋美術館主任研究員だった2013年6月18日、研究渡航先のパリにて急性骨髄性白血病のため急逝。学習院大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1988年から1996年まで静岡県立美術館学芸員として、同美術館のロダン館開館や国際シンポジウム「ロダン芸術におけるモダニティ」に携わる。2001年から国立西洋美術館に勤務し、2006年「ロダンとカリエール」展、2010年「フランク・ブラングィン展」(第6回西洋美術振興財団賞学術賞受賞)、2012年「手の痕跡」展を企画。著訳書にフランス国立ロダン美術館編『ロダン事典』(共訳・共同執筆、淡交社)、『ローマ 外国人芸術家たちの都』(共著、竹林舎)など。
中山 ゆかり[ナカヤマ ユカリ]
翻訳家。慶應義塾大学法学部卒業。英国イースト・アングリア大学にて、美術・建築史学科大学院ディプロマ取得。訳書にフィリップ・フック『印象派はこうして世界を征服した』、フローラ・フレイザー『ナポレオンの妹』、レニー・ソールズベリー/アリー・スジョ『偽りの来歴 20世紀最大の絵画詐欺事件』、サンディ・ネアン『美術品はなぜ盗まれるのか ターナーを取り戻したが学芸員の静かな闘い』(以上、白水社)、デヴィッド・ハジュー『有害コミック撲滅! アメリカを変えた50年代「悪書」狩り』(共訳、岩波書店)など。
内容説明
彫刻家は孤独だった。そして、苦闘の末におとずれた名声は、彼をいっそう孤独にした。大彫刻家の真の姿に迫る決定版評伝。
目次
第1部 一八六〇‐一八七九年(一八六〇年、パリのロダン家;姉マリアの誓願 ほか)
第2部 一八八〇‐一八八九年(ロダンはいかにして“扉”の注文を得たのか;静けさと創造性―“扉”のための模索 ほか)
第3部 一八八九‐一八九八年(天才たちの記念像―『バスティアン=ルパージュ』『クロード・ロラン』『ヴィクトル・ユゴー』;天才に捧げるさらなる記念像―『バルザック』『ボードレールの墓碑』 ほか)
第4部 一八九九‐一九一七年(事業家としてのロダン;異端者の勝利 ほか)
著者等紹介
バトラー,ルース[バトラー,ルース] [Butler,Ruth]
1931年生まれ。マサチューセッツ大学美術史学名誉教授。ロダン美術館学芸顧問
馬渕明子[マブチアキコ]
独立行政法人国立美術館理事長、国立西洋美術館館長。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学大学院、パリ第四大学大学院博士課程で美術史を学ぶ。東京大学助手、国立西洋美術館主任研究官、日本女子大学人間社会学部教授等をへて2013年より現職
大屋美那[オオヤミナ]
国立西洋美術館主任研究員だった2013年6月18日、研究渡航先のパリにて急性骨髄性白血病のため急逝。学習院大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1988年から1996年まで静岡県立美術館学芸員として、同美術館のロダン館開館や国際シンポジウム「ロダン芸術におけるモダニティ」に携わる。2001年から国立西洋美術館に勤務し、2010年「フランク・ブラングィン展」(第6回西洋美術振興財団賞学術賞受賞)。ほか企画
中山ゆかり[ナカヤマユカリ]
翻訳家。慶應義塾大学法学部卒業。英国イースト・アングリア大学にて、美術・建築史学科大学院ディプロマ取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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星落秋風五丈原