Oe(おおえ)―60年代の青春

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  • サイズ B6判/ページ数 373p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784560084830
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0095

出版社内容情報

大江健三郎作品の装幀を手がけ、同時代を伴走してきた著者が、六〇年代の大江文学と向き合い、現代への鮮烈なメッセージを?み取る!

装幀を手がけた大江健三郎作品の秘密

 大佛次郎賞を受賞した『本の魔法』では、実は著者と最も関係が深いと思われる大江健三郎について言及されていなかった。370頁を超える本書に目を通せば、読者はその理由がわかるだろう。
 著者が手がけた装幀で、最多を誇るのが大江の作品である。二人はほぼ同世代。大江10歳、著者9歳のときに敗戦を経験し、同時代を歩んできた。1970年に『叫び声』の装幀を依頼されて大江と出会い、以来、作品の深い読みが反映された装幀で大江の代表作が次々と世に送り出された。
 大江作品は、小松川高校事件(女子高生殺害事件)、安保闘争、浅間山荘事件、狭山事件、原爆と原発事故による被曝、沖縄、在日朝鮮人の問題など、常に実際の事件や社会問題と想像力が結びついたものである。本書で大きく取り上げる『叫び声』と『河馬に?まれる』には、大江が追究してきたテーマの全てが網羅され、不気味なほど現代に繋がる。
 著者は装幀をした時代を振り返り、大江作品を改めて多方面から精読し、国家や組織などと対峙する「個人」の魂の声に突き動かされながら、小説からだけではわからなかった事実を引き出していく。著者ならではの視点と感性で大江文学から現代への鮮烈なメッセージを?み取る、渾身の書き下ろし!

序章 一冊の本の形
第一章 『叫び声』
 一 こらあじゅ1987
 二 恐怖の時代
 三 黄金の青春の時と犯罪
 四 停滞から抜け出す少年
 五 ジラード事件
 六 レモン湯を飲みながら
 七 わが耳を疑うもの
 八 幸福をさずける家
 九 巨大な無線劇場
 一〇 忘れておいたほうがつごうのよい問題
 一一 「怪物」の本質について
第二章 『河馬に?まれる』
 一 ひとしれず微笑む
 二 熱狂
 三 パラダイス
 四 少年A
 五 無意味な死
 六 『洪水はわが魂に及び』
 七 大石芳野の写真
 八 エリオットの詩からの河馬
 九 幼児虐待
 一〇 闘争と青春
 一一 「原爆の図」美術館
 一二 「ほそみさん」の手紙
 一三 革命女性
終章 小説の方法
あとがき

大江健三郎著作装幀一覧
参考文献

【著者紹介】
画家・作家。1936年、群馬県前橋市生まれ。1988年「バー螺旋のホステス笑子の周辺」で芥川賞候補、93年「犬」で川端康成文学賞、2007年『ブロンズの地中海』(集英社)で毎日出版芸術賞、11年『本の魔法』(白水社)で大佛次郎賞受賞。著書はほかに『紅水仙』(講談社)、『戦争と美術』(岩波新書)、『影について』(講談社文芸文庫)、『戦争と美術と人間』(白水社)、『孫文の机』(白水社)、『絵本の魔法』(白水社)、『幽霊さん』(ぷねうま舎)、『雁の童子』(作・宮澤賢治、絵・司修、偕成社)、『絵本 銀河鉄道の夜』(作・宮澤賢治、絵・司修、偕成社)など多数。1986年、池田二十世紀美術館で「司修の世界展」、2011年、群馬県立美術館で「司修のえものがたり―絵本原画の世界―展」を開催。

内容説明

大江健三郎作品の装幀者は、はからずも同時代を併走してきた。大江文学から読み解く現代への鮮烈なメッセージ!

目次

序章 一冊の本の形
第1章 『叫び声』(こらあじゅ1987;恐怖の時代;黄金の青春の時と犯罪;停滞から抜け出す少年;ジラード事件 ほか)
第2章 『河馬に噛まれる』(ひとしれず微笑む;熱狂;パラダイス;少年A;無意味な死 ほか)
終章 小説の方法

著者等紹介

司修[ツカサオサム]
画家・作家。1936年、群馬県前橋市生まれ。1988年「バー螺旋のホステス笑子の周辺」で芥川賞候補、93年「犬」で川端康成文学賞、2007年『ブロンズの地中海』(集英社)で毎日出版芸術賞、11年『本の魔法』(白水社)で大佛次郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

踊る猫

24
個人的な繰り言を書くと、私が物心ついた時は大江健三郎は既に日本文学の重鎮的存在だった(なにせノーベル文学賞にまで輝いたのだから)。ゆえに敬して遠ざけられる、語りづらい存在だったように思う。司修のこの本はそんな風に大江を遇してはもったいないことを私たちに教える。『叫び声』と『河馬に噛まれる』の2作を重点的に論じたこの本は大江が極めてジャーナリスティックでフレッシュな問題意識と感受性を備えた作家であり、ゆえに今読み返しても充分アクチュアリティが保証されていることを証明する。むしろ、これから大江の時代が始まる?2022/04/06

hasegawa noboru

2
大江健三郎の『叫び声』と『河馬に噛まれる』、主にこの二作品(筆者はこれらを含めて多くの大江作品本の装丁者)の周辺を広げに広げ、執拗に洗い出そうとしている。六〇年安保闘争、七〇年代初期一四名もの仲間の殺戮で終わった連合赤軍革命闘争の無残な結末。永田洋子や森恒夫やの、おぞましいい手記などをここで読む羽目になろうとは。それらの資料引用の切り貼りが長々と続いたりするのだ。が、読み応えは十分なのだ、なぜか?。結びに引用されている大江の想像力に関する言葉〈人間の生存そのものを言葉で表現する〉〈わが身を投げ出す力〉か。2016/02/04

ろま〜な

1
中学生くらいの頃に幻想的な絵に出会い、多くの本も読んできた司修さんの著作の中でも、これは重苦しく読了までにずいぶん時間がかかりました。小説の背景にある実際の事件、特に連合赤軍については、純粋に自身の存在をかけて革命を追求していった末の切羽詰まった状況が理解できてしまう、だからこそ痛ましくて辛い、衝撃的な内容でしたが、また世の中が動いているいま、知っておくことができたのは良かったと思います。★全文感想はブログ→http://tubam.kamakurablog.com/Entry/164/2018/08/17

ナッキャン

0
初の作家(画家・装幀)こちらが一番避けて通りたかった大江健三郎氏の60年社会のうねりの中で作品とした2冊「叫び声」「河馬に噛まれる」そして「洪水は わが魂に及び」をテーマに司修氏の想い出(思想)の洪水じゃ。朝鮮人への差別部落差別(戦時、戦後の貧困が生む)そして学生運動、人として生きる事とは何。社会の動きは誰の為。平等自由って本当に国家が守ってくれてるのか?大江氏の作品は社会への闘争そのもの。然も60–70年国家主導による社会繁栄の中で抗った学生による安保運動、閉塞感が漂う中で生まれた革命運動は悲し過ぎる 2023/12/16

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