内容説明
精緻きわまりない究極の「私小説」は、父の遺骨探しの旅から始まる。過去・現在・未来が相互嵌入式に複雑に重なり合いながら言語は歴史をはらみ、アカシアの葉がそよぐとき、小説が生まれる―。作家としての自分の「起源」にさかのぼるクロード・シモン版『感情教育』、生誕100年を機に復刊。
著者等紹介
シモン,クロード[シモン,クロード] [Simon,Claude]
1913‐2005。フランスの作家。マダガスカル島タナナリーヴ生まれ。11歳で母を亡くし、パリの名門スタニスラス校の寄宿生となる。オックスフォードやケンブリッジ大学に通ったのち、絵画を学ぶ一方で、カフカ、ジョイス、フォークナー、コンラッド、プルーストを発見。1936年9月、スペイン内戦下のバルセロナに2週間ほど滞在して純粋な暴力に初めてふれる。CNT(全国労働者連合)アナキスト系のメンバーと連絡を保ち、武器輸送に協力
平岡篤頼[ヒラオカトクヨシ]
1929‐2005年。1952年早稲田大学文学部卒。フランス文学専攻。早稲田大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイトKATE
24
非常に難しい小説(散文)だった。比喩が繰り返し登場する長い文章と、登場人物が「彼」と「彼女」しか書かれていないため、誰のことを書いているのか分からない所があり読むのに難儀した。第一次世界大戦に従軍した父親と第二次世界大戦に従軍した著者の体験が書かれているが、どこか漠然として戦争の過酷さが伝わってこなかった。何とか読了したけど理解できていない。2021/05/19
かんやん
22
たとえて言うならば、海底に向けて深く深く潜行してゆくのだけれど、息が続かずに窒息しそうになりながら何とか浮上して、また息を大きく吸って潜り込む。その繰り返し。延々とセンテンスは引き伸ばされて、時も同じく引き伸ばされて、それどころか分岐し、重なり合い、息継ぎの句点を求めてくぐり抜けてゆく文章体験。戦場へ向けて闇を進む汽車、雨の中の果てしない行軍(騎馬での!)、機銃掃射に対してサーベルを抜く連隊長。わけのわからぬまま混沌に呑み込まれて、噛み砕かれ咀嚼され消化され排泄されたような戦争体験。茫然自失。2017/12/31
古義人
6
ひょっとするとフランドルやファルサロスの方が、文学的、方法的な冒険を行っているかもしれない。しかし僕は『アカシア』を愛する。2020/03/17
gu
2
文章を視覚的に再現するのが苦手なので、ヌーヴォーロマンと言われる作品を読むのに苦労する。クロード・シモンの作品では比較的読みやすいと言われるだけあって、入り組んだ構文にも覚悟していたほど置いて行かれることは無かったけれど、数ページにわたって句点の付かない文章が続いた挙句に途中から違う人間の話が始まったのにはさすがに困惑したし笑ってしまった。小説を書こうとする、何かを思い起こそうとするときに、机に向かい窓から外を眺めるというのは(経験はないけれど)なんだかすごくわかる気がするし、2020/06/07
若布酒まちゃひこ/びんた
2
シモンをはじめて読むならこれがいいかも。2015/02/15