出版社内容情報
建築と芸術を愛し、政策の転換によって帝国に安定と繁栄をもたらしながら、長らく評価の低かったハドリアヌス。評伝『キケロ』の著者が古典史料を駆使し、その実像と時代を活写する。
内容説明
複雑で、無気味で、魅力的な支配者。「ローマ五賢帝」のひとりで、帝国に繁栄と安定をもたらしながら同時代の厳しい批判も浴びた、優れた軍人かつ芸術家肌の皇帝の生涯を、時代背景ごと描き出す。
目次
西からの侵入者
危険な世界
希望あふれる若き紳士
帝国の危機
新王朝
ローマでの生活
フラウィウス朝の没落
皇帝の息子
オプティムス・プリンケプス(至高の皇帝)
ドナウの彼方
雌伏の時代
東方からの呼び声
任務完了
四人の執政官経験たち
ローマへの道
旅人
辺境
最後の別れ
ビテュニアの少年
ギリシアの島々
ホームとアウェー
どこに行ってしまったのだ、わが愛する人よ
「やつの骨が腐らんことを!」
もはや冗談を言うこともない
戦争と平和
著者等紹介
エヴァリット,アントニー[エヴァリット,アントニー][Everitt,Anthony]
1940年生まれ。ケンブリッジ大学コーパス・クリスティ・カレッジ卒業。アーツカウンシルに長年勤務し、事務局長を歴任した後、ジャーナリストとして活躍
草皆伸子[クサカイノブコ]
1985年東京外国語大学卒業。1989‐1995 ナポリ東洋大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホームズ
15
ハドリアヌスの子供の頃の記録があまりなかったようで前半はネルヴァやトラヤヌスを中心に話が進んでいく感じ。5賢帝の前半の3人の事が色々読めたのは良かった。ハドリアヌスが皇帝としては有能だったのに個人としてはかなり問題があったというのは面白かったかな(笑)ちょっと中盤のだるくなってしまった感じがあるけど楽しめたかな(笑)2013/03/07
MUNEKAZ
8
ハドリアヌスの評伝。その生涯のみならず当時のローマ社会の様子や風俗についても詳しく触れており、彼の複雑な人間性の背景が伺える。アウグストゥス以来の拡張政策を転換したことから「平和主義」的な印象を持たれがちなハドリアヌスであるが、軍の規律や訓練を重んじ、ユダヤ人の反乱を容赦なく叩き潰したあたりは、先帝トラヤヌスに劣らぬ武威の皇帝であることを感じさせる。また彼のギリシャ贔屓が、ギリシャの人々に「ローマ人」意識を植え付けたのだとすれば、のちのビザンツ帝国の端緒はここにあるのかもしれない。2018/01/20
いっこ
2
9月にヴィッラ・アドリアーナを訪れた。この別荘をこよなく愛したハドリアヌスのことを、もっと知りたくなり読んでみた。リーダーとしての評価は、塩野さんの『ローマ人の物語』と重なるところが多いが、こちらは一人の男の一生としてより人間的に語られていた。2024/10/06
hal
2
ハドリアヌスは歴代のローマ皇帝の中で、個人的に一番興味がある皇帝だが、彼についてまとまった文章は塩野七生さんのものだけだった。で、読んでみた感想は、すごく読みやすくて、面白い。全体的に彼に好意的な見方なのは塩野さんと同じだが、引用している資料の違いからか、もう少し人間味のある人物として描かれていたと思う。ただヴィラから推測される人間像は孤独なものでもあり、その死も酷く孤独である。その陰影の深さが彼を解釈する際の一番の難しさだと思うが、本書ではその難しさをややソフトに描いているように思う。2021/02/20
shou
1
ネルヴァ、トラヤヌス、ハドリアヌスの時代を読みやすい文章で辿る。政治史だけではなく社会風俗などにも言及。三人とも善帝とされていながら、特に即位後の人間性には疑問符。そうでもなければ皇帝など務まらなかったのか・・・。2014/01/05