出版社内容情報
キューバ革命から数年を経て、変わりゆく首都ハバナの姿を、傍観者として生きる男の内なる眼差しによって映し出す。
内容説明
1961年、カストロの社会主義宣言によって、資産家たちが次々とアメリカに亡命するなか、ブルジョワ階級の「僕」は妻や両親と別れ、ひとりハバナに残る。街を歩き、変わりゆく風景や人々の姿を観察する日々。街で出会った女優志望の少女エレーナと関係を持ち、キューバ同様に「低開発」な彼女を、かつて妻にしたように教育しようとするが…。
著者等紹介
デスノエス,エドムンド[デスノエス,エドムンド][Desnoes,Edmundo]
1930年ハバナ生まれ。ニューヨークのコロンビア大学で学んだ後、雑誌編集者として働く。59年、革命の成功に伴いキューバに帰国。新聞や雑誌に寄稿を続け、61年、最初の小説No bay problemaを発表。65年に本書『低開発の記憶』を、67年には著者自身による英語版Inconsolable Memoriesを刊行。68年、トマス・グティエレス・アレア監督と脚本を共同執筆した同名映画が高い評価を受ける。79年より再びニューヨーク在住
野谷文昭[ノヤフミアキ]
1948年神奈川県生まれ。東京外国語大学大学院外国語学研究科ロマンス系言語学専攻修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授(現代文芸論・スペイン語文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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三柴ゆよし
16
妻や両親と別れ、革命後のハバナにひとり留まり続ける鼻持ちならないプチブルインテリクソ野郎が、テキトーにひっかけた女の子を手籠めにするも、彼女の家族から淫行罪で起訴されそうになり、それにも懲りず、今度は女中に手を出したところで折りしも「十月危機」が勃発、すわ全巻の終わりかと怯えるが、結局のところ死の危機は過ぎ去り、語り手は「低開発」のままに生きることを余儀なくされるのであった……というあんまりな筋書きに、今日日、興趣をそそられる読者は少数派であろう。とはいえ、小説としてはなかなかどうしてよくできている。2019/02/09
きゅー
9
1960年代のキューバ。知り合いが次々と国外へと脱出するなか、語り手のダメ男は家賃収入で暮らし、街で知り合った女性と良い仲になったり、女性の家族から脅迫されたりする。キューバという国が低開発なのではない、そこで暮らす人間の感情、文化までもが低開発なのだとうそぶく語り手の姿は痛々しい。同名の映画とはだいぶ雰囲気が異なるようなので、読み比べをしてみると面白いかもしれない。2016/02/09
syachi
5
英語の話せるインテリがなんでキューバに残ったんかね。父親に家具屋を用意されて好きな女性と離れなりたかった小説家にもなれてないないことの象徴みたいなもんだと思うけど。意図を読み違えてるのか、うーん謎だ。2015/04/12
刳森伸一
1
周囲の人や国を低開発だ、低能だと見下すインテリ風を吹かした男が実際にはその状況に適合した「低開発人間」であった、という感じの表題作他3篇。作者も作家として登場して語り手の男にバカにされたりするなど、作者自身の戯画という側面もあるかもしれない。フィクションとはいえ、キューバ危機におけるキューバ側の一市民からの証言は珍しいので、それだけでも貴重だろう。2020/06/16
(^_^)/
0
面白い。2017/08/13
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