内容説明
矛盾をはらんだ国民作家の実像。綱渡りの人生を容赦なく描く。出生の謎、ナチ政権下での“抵抗”の実際、母親や恋人たちとの異常なほどの関係等々、矛盾をはらんだ大国民作家の実像に容赦なく迫る評伝の白眉。
目次
エーリヒ・ケストナー―謎を秘めた啓蒙家
トランプの札として使われた子ども―一番の優等生でとびきりの孝行息子
EかZか?―本当の父親は誰も知らず
食べ物はいつも同じ―教員養成学校と軍隊の時代
ケストナー、ケストナーになる―ライプツィヒの大学生と新進気鋭のジャーナリストの時代
感情教育―イルゼ
「あの小さなエーリヒがどんどんと有名に」―ベルリン時代の最初の数年間
エーミール、映画に行く―ケストナーの天才時代
『ファビアン』
「平和だったころのよう」?―“第三帝国”時代のささやかな妥協
『雪の中の三人の男』―一つの素材の変転
「ハズレの人でいてね!」―戦争中の日々
『ミュンヒハウゼン』
『四五年を銘記せよ』―移行期
二度目の出発
「火薬樽の上で生きるって、とにかくたいへんなのです」
最晩年の日々―国民的作家というキッチュの地獄で
著者等紹介
ハヌシェク,スヴェン[ハヌシェク,スヴェン][Hanuschek,Sven]
1964年生まれ。ミュンヒェン大学ドイツ文学科教員。ドイツ現代作家の研究
藤川芳朗[フジカワヨシロウ]
1944年生まれ。東京都立大学大学院修了。ドイツ文学専攻。横浜市立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tochork
3
大著。ケストナー伝記の決定版だろう。幼少期から没するまでトコトン研究されている。しかしあまりに詳しいため、読書には向かないか。ケストナーの交友関係、思想、作品(詩は引用も多い)などから人柄を察する。特筆すべきは膨大な手紙! 母への手紙にはその時々における率直な意見が述べられている。ケストナーの性格がこれほどわかる資料はない。作品に対する世間の反応などもいちいち詳しい。当時の社会情勢も肌で感じられる。すばらしい一冊だが、惜しむらくは600ページを超え7000円に迫ること。蔵書に加えたいが!2012/09/26
OHNO Hiroshi
2
母親との親密な関係。それとはうらはら、父とは疎遠。挨拶とかを母親を通じて、けっして直接父へは接触しない。実の父親は、別な人物ではとの憶測もある。その人は医者であった。 母は抗鬱症だった。 「ママ、見て、絵をかいたんだよ」 詩人でもあった。 女好き。つかいすて? 手紙とか、資料をくわしく調べて書いてある。が、ケストナー本人への激しいアプローチがないような気がする。 ナチス、第三帝国での沈鬱な日々。 情けない性格があらわになってくる。2015/08/11
せいむ
0
辞書並みの厚さ。文字も小さめ。だが、彼の手紙のみならず周囲の人のメモやら記事やらを大量に収録、彼のおかれた状況を再現してみせる。おかげでちょっと読みにくくなっている部分もあるけど、おそらく一番詳しい伝記本になるだろう。そして信頼もおけると思う。 感想としては、母親が精神的に弱い(ナヨナヨという意味でなく)のが家族機能不全の原因じゃないかな、実父がどうこうじゃなくて。実際、女性交際にそれっぽい影響出てるしと思った。2022/12/10
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