内容説明
ニコラ23歳、無職、宿ナシ、疎外感・劣等感・被害妄想…現代人の心の暗部をとびきりの抒情で詠いあげた、ダメ男小説作家ボーヴの傑作長編。
著者等紹介
ボーヴ,エマニュエル[ボーヴ,エマニュエル][Bove,Emmanuel]
1898年に、パリの貧しい移民の家庭に生まれる。コレットに見いだされ、1924年に『ぼくのともだち』でデビュー。この作品と『のけ者』二作により、1928年にはフィギエール賞を受賞した。ユーモアとペーソスを交えて描いた、都会で孤立する不器用な人物像が、多くの読者の共感を呼び、一躍人気作家となる。1945年病没
渋谷豊[シブヤユタカ]
1968年生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒。パリ第四大学文学博士。信州大学人文学部准教授。専門は、フランス現代文学、比較文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紅はこべ
92
ボーヴの主人公はダメ男というのは聞いていたが、まさかここまでとは。フランス版何にもしない人、いや、できない人?財力がないのに、高等遊民を気取っている。しかもママンというお荷物付き。ニコラは『それから』の代助の未来の姿かも。ルイーズの父も病んでいたから、これは血筋なのか。テレーズはまともな人を夫にあてがわれたことで、シャルルは戦争に行ったことで、父の負の遺産は受け継がなかったけど。アメリカだったら、ニコラのような境遇はギャングや軍隊に入ったりするものだけど、そういう度胸もなかったね。2019/08/27
zirou1984
43
ダメ男文学を超えたなんというダメ家族文学。ニコラとルイーズのアレクサンドル母子の意地でも働こうとしない、労働への想像力の持ち合わせの無さは軽蔑を越えて感嘆もの。周囲にひたすら借金を頼み行きながら、徐々に現実と妄想の区別の付かない錯乱状態へとフリーフォール。貧困とは金がないことに加え、金を使うことでしか楽む事のできない文化的素養の事を指すのだと改めて確信する。どん底だと思った?残念、まだ下ってものがあるんだよ。もっと下ってのがあるんですよ。それを知った時にどうすればいいかって?そう、笑えばいいと思うよ。2013/10/12
燃えつきた棒
34
どうやら邦題から手前勝手な思い入れをしすぎてしまったようだ。 映画「無能の人」や、ゴーゴリ「外套」のような作品を想い描いてしまっていた。 主人公のニコラもその母アフタリオン夫人も、どんなに困窮に喘いでも、親族や他人に無心することはあっても、ほとんど自助努力をすることがないという怠け者の僕でさえ引いてしまうほどの救いようのなさで頑強に感情移入を拒んでいる。 2018/08/30
junkty@灯れ松明の火
25
・・・とっても暗~い。母と息子が借金しまくった挙句に踏み倒し続け、最後に破滅するお話です。破産寸前にもかかわらず息子は働かないでフラフラし続けて、自分が貧乏なのは世の中の人達が助けてくれないせいだ!と幸運を求めて更にフラフラします。最後の破滅も自分から突き進む訳ではなく、ウッカリ転んだら破滅でした、みたいな何処か他人事。全編がそんな感じで「ちょっとは働けよ!」とイライラしながら読んでたのでスッキリハッピーな読後感からは程遠い感じです。とにかくお正月向けのお話では無かったですね(笑)2012/01/05
長谷川透
23
生活のために借金を重ね、家賃を滞納にツケの踏み倒し、挙句の果てに住処を追われダメ人間街道一直線の母子。母は借金を繰り返しながらも浪費癖が治らず、息子は頑なに働こうとしない。借金をする際の親子の問答が愉快極まりなく、何回愚行を繰り返せば反省するのだろう? 「いずれ大金が手に入るさ」と楽観的観測の世界を構築しながらこの親子は不思議と前向きに生きるが、破滅への扉はじわりじわりと忍び寄ってくる。楽観的空想の世界に住処を見出したとするならば、きっと彼らは幸せだったのだろう。でも、僕はそんな世界に生きるのはごめんだ。2012/12/16
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