出版社内容情報
山間の町で、病床の父と暮らす〈ぼく〉は、ある日、古道具屋の鳥籠のトビに心を奪われる。生と死をめぐる美しい寓話。
【著者紹介】
1956年フランス生まれ。17歳より3年間海軍に在籍。さまざまな職を転々とし、児童文学作家としてデビュー。「四人の兵士」で2003年度メディシス賞受賞。著書に「しずかに流れるみどりの川」など。
内容説明
山間の小さな町で、病床の父と、夜こっそり家を留守にする母と暮らす“ぼく”は、ある日、古道具屋の鳥籠のトビに心を奪われる。季節の移ろいのなか、静謐かつ繊細な筆致で描かれる、生と死をめぐる美しい寓話。
著者等紹介
マンガレリ,ユベール[マンガレリ,ユベール] [Mingarelli,Hubert]
1956年フランス、ロレーヌ地方に生まれる。17歳より3年間海軍に在籍し、その後さまざまな職を転々とする。1989年に作家デビュー、児童文学作家として活躍した後、1999年『しずかに流れるみどりの川』で本格的な中・長篇小説の執筆を開始。フランスのグルノーブルに程近い山村でひっそり暮らしながら、毎年一冊のペースで小説を発表している。『四人の兵士』で2003年度メディシス賞受賞
田久保麻理[タクボマリ]
慶應義塾大学文学部仏文科卒。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
87
「山間の町で、病床の父と、夜こっそり家を留守にする母と暮らす〈ぼく〉は、ある日、古道具屋の鳥籠のトビに心を奪われる。季節のうつろいのなかで描かれる、生と死をめぐる美しい寓話」というもの。本作品の何よりの売りは、作者マンガレリの織り成す作風自体にある。2023/07/10
NAO
65
病気の父を支えるために養老院でアルバイトをし家計を助けるために心安らかならざることもしなければならず決して平穏とはいえない毎日を送っている少年と、父親の静かで強い繋がりを描いた作品。父親のために辛い日々を送っていても不満を持つどころか父親が心の中に持っている不安や疎外感・挫折感を敏感に感じ取って父の哀しみに共感している少年の優しさ。彼らが生きるために必要だった〈物語〉。その冬の雪は、あらゆる意味で最後の雪だった。2024/07/11
南雲吾朗
62
病床の父は息子を温かく見守り、息子は病床の父を熱心に気遣う。生活を支えつつ、それを包み込むように見守る母親。家族の愛が感じられる。ただ、人間の都合によりまるでごみを捨てるように生き物たちが捨てられる。自分がトビを飼いたいために、生き物を殺してお金を稼ぐ。生活環境等を考えたら仕方がないことなのかもしれないが…。動物が死ぬのを読むのは本当につらい。2020/02/12
キムチ
60
情景はヨーロッパの何処のイメージ。登場する父子。父は死期が迫っている感、少年は逞しいイメージではなく、働いている養老院の匂いもあり、影を背負っている。筆者作品はお初。童話でも寓話でもなく、ひっそりと淡い色彩が続く。鳶と父と母・・僕が父さんと鳶の一体化を望んでいる理由がよく解らないままラストへ。ひっっ者の作風だろう、こんな手法。確としたメッセが無くても沈黙が何かを伝えている。巻末に有るように音楽で言うならフェルマータ。筆者自身が好むモチーフは「父と子」水滴のポタリポタリ、粉雪が降り積もる・・そんな点景 2019/11/08
マリカ
31
「トビを飼いたいと思ったのは、雪がたくさんふった年のことだ。そう、ぼくは、その鳥がどうしてもほしかった。」何度読んでもいいなと思う。多くは語られていないがゆえに、少年の心のひだに寄り添うことができる。少年が老人と散歩した道、溺れてゆく子猫たち、父に語ったトビへの思い、老犬と歩いた雪原、自動消灯器の音、父のベッドの木枠の温度。すべては雪がたくさんふったあの年のできごと。2016/11/04