出版社内容情報
自分の目で生活を見つめるようになった時、明日という日は特別の意味をもち始める。虚偽の才能に絶望するワーニャと、秘かな愛が一瞬に打ち壊されたソーニャが心に言い聞かせる希望。
内容説明
自分の目で生活を見つめるようになったとき、明日という日は特別の意味を持ち始める。一心に妹の夫の才能を信じながら、その虚偽に気付いて絶望するワーニャと、秘かな医師への愛が一瞬に打ち壊されたソーニャが、互いに生きることを心に言い聞かせながら立ち直るまでを描く、近代演劇の頂点をきわめた名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
保山ひャン
5
マイケル・フレインの英訳からの翻訳。マイケル・フレインの解説では、本作が「森の主」の改作であることなどが述べられていた。教授に失望してついには拳銃まで持ち出すワーニャ伯父さん、エコロジーっぽいことを述べる医師、その医師に恋心を抱くが相手にしてもらえないソーニャ。医師は教授の妻に横恋慕していたのだ。「きれいな髪をしているわ」と言われたソーニャの返事がいたたまれない。「そんなこと言わないで!女の人は顔がきれいじゃないとみんなに言われるの、『きれいな目をしている、きれいな髪をしている』って」 チェーホフ!2016/10/21
hdk
4
2022年6冊目。『ワーニャ伯父さん』(チェーホフ著)映画『ドライブ・マイ・カー』からです。やはりケア、回復の話であった。信じていたものに裏切られる絶望感。恋愛も人生もままならない。それを晴らそうとして銃まで持ち出してなお失敗してしまう。辛い。だけど彼には最後までそばにいてくれる人がいた。ソーニャの最後の場面の台詞は、ワーニャ伯父さんだけでなく、多くの人生を救ったに違いない。いっしょに生きる人の有り難さ。どんな辛くても生き抜いた先には、何かが待っているはずだ。2022/01/21
イワシ
3
「だが彼は、今度の改作でなにかの方向への道を探っていた。そしてワーニャが生き残ることで、そのなにかはっきりしてきた。それはまさに──生き残ること、だった。生きながらえること、人生が希望も意味も奪われたあともなお生き続けること、だった。」マイケル・フレイン「『ワーニャ伯父さん』について」2021/08/29
たっつぁん
3
伯父さんが前半では愚かで自尊心が高く、それでいて自分を可哀想だと可愛がる滑稽な人間であるが、短期間の中で変化し、クライマックスでは希望と救いを感じさせ清々しさを残してくれる。この作品はもう何度か読んで噛み締めねばと思うし、今度は他の登場人物をより深く理解して読み進めたいと思う作品です。名作の名にふさわしい名作。2012/01/17
ヘンリー
3
世界ダメ男選手権ロシアチャンピオン、ワーニャ伯父さん。じつに素晴らしいダメ男ぶりだ。このシリーズはマイケル・フレインの長めの解説がおトク。2010/03/27