出版社内容情報
1939年に現われたグラックの処女作である本書は、中世の聖杯伝説や近代の暗黒小説、ドイツ浪漫派などの伝統とシュルレアリスムとの確乎たる結合をはたして、ブルトンの絶讃を博したものであり、一見したところガラスのような透明な文章の下に、情熱と夢想、欲望と呪縛を隠しもつ戦慄的作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tomo*tin
18
私は目が覚めると城にいる。三人から少し離れたところに私の場所は用意されている。話声は無い。どこまでも静謐でうっとりする様な空気に包囲されている。ここには過剰な歓迎も過激な感情も存在しない。けれど物事は流麗にひっそりと進み、いつの間にか私は囚われの身になっている。もしかしたら自ら望んで囚われたのかもしれない。囚われなければいけないと本能が言ったのかもしれない。決して面白い類の物語ではないと思う。しかし魅せられるのだ、すべてに。そのあまりの美しさに。おかげで私は未だに城から抜け出せないでいる。2009/06/02
藤月はな(灯れ松明の火)
11
「倉橋由美子の偏愛文学館」での紹介に興味を持ち、読みました。印象は弁士のいない活動写真を映画館で観ているような読後ですが開かれているようで閉じている世界のために自分も活動写真内にいて城に囚われ、離れなくなっているような気分になるという多重的な眩惑感に襲われます。そして映画館からも離れられず活動写真が終わったのちも席を離れられないという幻惑が現実と化すような不思議な物語です。2012/09/02
sk
6
特異な文体と複雑な内容。実験的な純純文学だ。2020/07/13
rinakko
2
ただ、もう、好きな世界。うとりうとり…。2012/11/26
littlelielittle
0
長編小説と呼ぶのが気が引けるほど、幻想的なイメージ「のみ」で綴られた物語。私にはわけがわかりませんでした。2011/01/31