出版社内容情報
現代人の不安と恐怖は、神話、非合理、夢、狂気などの幻想世界に新たな精神の糧を求めている。フランス幻想文学は妖精物語に源を発し、外国作家の影響を受けながらもつ独自の、魅力に富んだ潮流を形造ってきた。本書は、色とりどりに開花したその作品群から厳選して編んだ戦慄と魅惑の短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
90
フランスの幻想文学のアンソロジーで有名な作家の作品が多い割には今までに読んだことのないものばかりなので結構堪能しました。ただ私は以前に「怪奇小説傑作集」でフランスの作家のものを読んだときほど印象には残りませんでした。ややもやもやした感じが幻想小説ということなのでしょう。その中でもネルヴァルの「悪魔の肖像」やクランの「怪物」などがよかったように感じました。フランスの作品はこのような幻想小説にむいている感じがします。2022/11/17
帽子を編みます
43
16篇、濃密な時間でした。どれもホラー風味あり。好きなものはヴィリエ・ド・リラダン『ヴェラ』、シュペルヴィエル『沖の少女』。美しく、儚く、もの悲しい。ゴーチエ『オニュフリユス』濃厚で少しずつしか読み進められませんでした。余韻が残る気がします。魂が熱いのでしょうか、友よ、友よ、我が友よ!と友への呼びかけが出てくると仏文ぽいなと思ってしまいます(個人的な印象です)。まとめて読むとロマン主義からの流れが見えて、文学史を思い出しました。2024/08/31
えりか
43
幻想とは陶酔。幻想とは不安。幻想とは恐怖。見えない何かに不安を抱く。不安はさらに大きくなり幻覚を見せる。それは次第に現実さえおかしはじめる。夢と現実の境はなくなる。鏡の中には一体何がいたのか。香の香りがたちこめ、蝋燭の光が怪しくゆらめく暗い部屋に一人残された気分。好きなのはリラダン「ヴィラ」甘く酔うような悲しみがあった。愛は死より強し。クラン「怪物」未知との遭遇。愛しあう男女。SF。ロブグリエ「秘密の部屋」女が横たわっている傍らに男がいる…、こちらはまるで映像をみているかのようだった。2016/06/15
棕櫚木庵
20
サド,バルザックからからロブ=グリエ,ジェラール・クランまでの16篇.内容も,怪談めいた話もあればSFと読めるものまでさまざま.滝田・窪田編『フランス幻想文学傑作選』全3巻とM.シュネデール編『現代フランス幻想小説』(共に白水社刊)から選んだという.大半はどこかで読んだことのある作品だったけど,それらを読み返して,こんなに長かったっけ,なんて感じてしまった.「沖の娘」(シュペルヴィエル),「仮面の孔」(J.ロラン)などは,1,2頁の掌篇のように記憶していた.印象的な部分だけが記憶に残ったのだろうか.→2022/04/18
qoop
3
コンパクトな体裁ながら、収録作家は18〜20世紀に亘る広範さ。民話を写実的にリファインしたようなD=A=F・ド・サド〈洲民一同によって証言された不可解な事件〉、死後の恋の儚さを書いたリラダン〈ヴェラ〉、まるでクトゥルーの襲来を読むようなモーパッサン〈オルラ〉、薬物に依る幻覚譚の傑作であるファレール〈静寂の外〉、夢幻のビジュアルが広がるシュペルヴィエル〈沖の娘〉、緊張感みなぎるクラン〈怪物〉など、内容的にも幅広いチョイス。2011/10/27
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- 和書
- ポオ全集 〈3巻〉