出版社内容情報
【全巻内容】1 灰色のノート/2 少年園/3 美しい季節1/4 美しい季節2/5 診察/6 ラ・ソレリーナ/7 父の死/8 一九一四年夏1/9 一九一四年夏2/10 一九一四年夏3/11 一九一四年夏4/12 エピローグ1/13 エピローグ2
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
64
1918年8月23日、流星群を見る死にゆくアントワーヌ。 ペルセウス座流星群かな? 長い小説は自己投入深いので、私も毒ガスにやられて療養中の気分。 全13冊、完読2020/11/11
syaori
59
最終巻。死にゆくアントワーヌの目を通し、三たび生きるとは何かという問いが浮び上ります。彼は言う、「人生に意味はない」。人は「いかにして」生きるかで満足しなければならないのだと。思えばこの物語は、様々な信仰や思想を持つ人々が各々の限界の中で「いかにして」生きるかを描いてきたのでした。そしてその中心たるチボー家の人々の人生に作者が託したもの、それは人間は平和な美しい世界を志向している、していてほしいという願いだったように思います。願わくば、彼らの厳しい鮮やかな人生を通し、多くの人々にこの理想が届きますように!2021/02/26
藤月はな(灯れ松明の火)
27
生と死、個人と国家、思想と感情、孤独と愛、平和と戦争に対し、ひたむきに現実を通して向きあってきた一大サーガ、完結。最終巻は死へと向かうアントワーヌの手記という異色の展開へ。いつも冷静沈着なフィリップ博士の一瞬の動揺に自分の命が本当に残りわずかであることを理解せざるを得なかったアントワーヌの姿に涙するしかない。しかし、彼は手記を通してジョン・ポールだけでなく、読者にも道標を遺したのだと思う。さよなら、ジャック、アントワーヌ。でもあなたたちは読まれ続ける限り、永遠となれるんだ。そしてありがとう。2015/09/30
ソングライン
20
フィリップ博士の診察で、余命短いことを知るジャックに、モロッコに去った恋人ラシェルが2年前に黄熱病で亡くなっていたことが、知らされます。ジェンニーとの書簡と亡くなるまでのアントワーヌの日記の形で物語は終わります。彼の最後の生きがいは、ジャックの遺児ジャン・ポールの未来でした。何百万が死に、また何百万の人間が生まれるこの世界で自分本位の生き方の虚しさを悟り、死の恐怖に打ち勝ったアントワーヌは自死の決意を固めます。このエピローグに作者の人生観が詰まっています。この物語に出会えたことを感謝しつつ、読了です。2020/05/19
ぞしま
20
フィリップ博士の意図せぬ動揺を見て、死の確信を深めるアントワーヌの悲痛さ。終わり方が想像もつかなかったが、ジャックの最後同様に悲しい結末だった。強烈な反戦、平和の希求、孤独と共に生きること、自身を完成させること、どこか諸行無常の趣…作者の意図と小説的価値とが溶け合う妙と筆致。父オスカール、弟ジャック、そして光に満ちたジャン•ポール。主人公はジャック(だと思うけど)、語り部は、物語の中心は、兄アントワーヌだった。チボー家の人々、正にタイトル通り、峻厳な眼差しに満ちたクルニクルだった。2015/01/18