出版社内容情報
【全巻内容】1 灰色のノート/2 少年園/3 美しい季節1/4 美しい季節2/5 診察/6 ラ・ソレリーナ/7 父の死/8 一九一四年夏1/9 一九一四年夏2/10 一九一四年夏3/11 一九一四年夏4/12 エピローグ1/13 エピローグ2
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
70
32歳になったアントワーヌの1日を描いた「診察」という副題の巻。その中で、父親のチボー氏が倒れ先がそう長くはないこと、ジャックが失踪していることが、間接的に語られる。命の問題に直面している医者アントワーヌの苦悩に、戦争が間近に迫っている1913年の暗さが重くかなりあう。2020/05/06
syaori
60
前巻から三年後。アントワーヌの医者としての一日を通して三年間の様々な変化と、人として医者としてのアントワーヌの姿とが示されます。驚くことにジャックは疾走中。余命「せいぜい三カ月」のチボー氏にかつての尊大な姿はなく、第一次大戦への道を歩む欧州情勢など全体に死と戦争の影の漂う巻でした。また死を待つばかりの赤ちゃんを巡ってアントワーヌを捉える問題も印象に残りました。自分に安楽死を選択させなかった「切実な、やむにやまれぬ何物か」、それは一体何なのか。「いつの日にか」この「なぞをとく」日は来るのでしょうか。次巻へ。2021/02/05
藤月はな(灯れ松明の火)
28
事務的に医療をこなすアントワーヌ。確かに効率よく、治療することで多くの命は救われるかもしれない。しかし、患者が病やその先に来る死に感じる違和感や苦悩、諦観、それでも希求したいと願う心に寄り添わずに治療する姿は果たして「良き医師」と言えるのだろうか。相変わらず、自らの偽善性に気づかないアントワーヌの姿にモヤモヤしたものを抱いてしまいます。2015/09/21
榊原 香織
27
5巻目 1913年 アントワーヌ、チボー家兄、医者、好きにならずにいられない2020/10/16
ソングライン
18
高等師範学校に通っているはずのジャックは2度目の失踪を遂げ、理由が語られぬまま兄アントワーヌの1日の診療の様子が描かれます。師匠フィリップ博士の信頼を得、独立した診療所を持った彼は、善意と自信をもとに、自身の治療法を確立すべく医療にあたります。しかし、彼の父は死の床に就いており、重篤な感染症に罹り手立てのなくなった乳児の父親から、安楽死を頼まれ、理性により断るも、その判断に心悩ませます。失った恋人ラシェルの面影にも苦しむアントワーヌの青春の出口はまだ見つかりません。2020/01/16