内容説明
変幻自在で、軽やかな肉体をもつ、空中に住むサタン―悪魔は、今も存在している!聖書が誕生するよりはるか昔のバビロニアに起源をもつ「彼ら」が、神や権力に対する抵抗のシンボルとなってゆく四千年の歴史を、詳しく解説する。文学・映画・音楽などの、親しみやすい切り口からも語る、悪魔史入門の決定版。
目次
第1章 闘争の神話ならびに旧約聖書における悪魔の始まり
第2章 ユダヤ=キリスト教の悪魔の密かなる誕生
第3章 中世の悪魔の多様な諸側面
第4章 大いなる悪魔の時代(十四世紀~十六世紀)
第5章 悪魔祓いと懐疑主義(十七世紀~十八世紀)
第6章 スーパースターとしての悪魔(一九世紀・二十世紀)
第7章 悪魔、その見せかけの退場
著者等紹介
平野隆文[ヒラノタカフミ]
1961年生。フランス(ルネサンス)文学・思想専攻。東京大学大学院人文社会系博士課程修了(文博)。現在、青山学院大学文学部フランス文学科助教授
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感想・レビュー
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マウリツィウス
17
【「悪魔」の文化史】キリスト教構想の成立させた黒魔術における異端反駁はサブカルチャーを介して語り継がれるも事実はシェイクスピア起源に分類される。人類史と悪魔史が密接関係にある連鎖を世界史上から提示させていく系譜は従来創世記に帰属する。古典/神話/試論の三軸から洞察するならば欠点と改善点は明らか。古代と中世を束ねた精神史はユダヤ教的でありキリスト教起源に属する悪魔は異教概念混在を踏まえる。創世記とは外部依拠された異空間定説だと否定したユダヤ教異端を消滅させていくプロセスは危機回避する。叙事詩存在は偶像視像。2013/05/30
三柴ゆよし
5
西洋史における悪魔の変遷と受容を、ザッとではあるが一望できる。神観念が純化して絶対善の体現者が登場すれば、必然的にその否定的側面、すなわち絶対悪を説明するための方便が必要になってくる。そうして生まれた存在が、宗教的なコードから解放たれて、いたるところで活躍している。考えてみれば善なんてものは結構安易に類型化されちゃうわけで、人間の想像力が奔放なかたちで発揮されるのは、やはり悪ということになるのかもしれない。文字なくして歴史なし。悪魔なくして文化なし。名著です。2010/07/14
すう
2
「文化史」ではない。思想史だ。キリスト教を中心に、マニ教等々、悪魔と神という概念を分かりやすく解説する良著。特にキリスト教の悪魔という概念がどう捉えられてきたのかを、神学、民衆のイメージ、文化人にとっての解釈…と、それぞれ的確に原初の教会から現在までを俯瞰する。ものすごく読みやすい!訳者の注釈も良い。神学史の重要な点も抑えられているので、ここに出てくる神学者をチェックするだけでも神学史を概観することが出来ると思う。2011/11/23
ほしの
1
一神教の神を信じたいために、悪魔という概念を発明したよう。世界の不条理、理不尽を悪魔に負わせる考え方は現在までそしてこれからも遍在し続けるような、、2015/12/19
tanukiarslonga
1
なぜこの世に悪が存在するかという問いが悪魔の誕生を促したよう。2015/04/26