出版社内容情報
「哲学」という一点からパスカルの思想を分解・再構成する。彼に対する哲学者や哲学史のつれなさ・薄情から説き起こし、現代思想への深いかかわりを、ライヴァルであったデカルトとの比較照合から解き明かす。カトリックの擁護者にすぎぬという通説を斥け、哲学史のなかにその思想を正統に位置づける。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里愛乍
26
パスカルの生涯を踏まえつつ、哲学者としての彼の思想を解いている本。モンテーニュやデカルトについても簡潔に解説しつつ、現代の言葉で進めてくれるので思った以上に読みやすかったです。第三章以降は一気読み、特にむすびの文章は哲学者解説本というお堅いイメージからはほど遠く…(よい意味で)順番は間違っているとは思いますが、本書を読んでから「パンセ」を読むのもありかもしれない。そのあとまた再び本書を読んでみたいと思いました。2015/06/17
うえ
7
「人間の「定め」について、パスカルは、すぐれて悲劇的な一幅の絵画を描いて示してくれる。もちろんここには、キリスト教のいわゆる堕罪と罪に関わるいっさいを、行間に読み取らねばならぬ。しかし、望んだわけでもないのに、世界のなかに投げ捨てられてしまっているとするパスカルの人間描写は、かずかずの現代哲学者がなし得た次のごとき叙述のすべての、暗黙裡ないし秘めやかな、産みの親になったのである…人間永劫の経験。要するに、サルトルの『存在と無』『嘔吐』『賭はなされた』を成功にみちびいたすべてのテーマの産みの親に、だ。」2019/12/05