出版社内容情報
昨年度エッセイスト・クラブ賞受賞作『書を読んで羊を失う』に続く第2随筆集。ボードレールの詩から出発して猫の瞳の謎を探った古今の書物を追う表題作を始め、読書の楽しみ溢れる名品揃い。【編集者よりひとこと】シンデレラは本当はガラスの靴ではなくてリスの皮の靴を履いていた?! 古い俳句や随筆に登場する不思議な虫、茶立虫は実在するのか?! ボードレールは『パリの憂愁』で「中国人は猫の目に時間を読みとる」と書いたが、実際に中国人も、そして江戸の人々も猫を時計代わりに使っていたらしい……エッセイスト・クラブ賞作家が、書物味読の中から生まれた思いがけない発見を、心にしみる名文で綴る極上の読書随筆。
内容説明
書物味読のなかに生まれた思いがけない発見と静かな感動。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作『書を読んで羊を失う』の著者による書き下ろし読書随筆第二作。
目次
誤りの効用
鐘の音
海を見た
茶立虫
柿の実の落ちる音
木を植えた人
猫の目に時間を読む
蔵書の修復
版木師の春秋
紙魚
本の変容
逸話の転化
引用の東西
水の味わい
蓑虫
木中の文学
夜の霰―夏目成美「夜の雹の記」による
著者等紹介
鶴ヶ谷真一[ツルガヤシンイチ]
1946年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業。『書を読んで羊を失う』で第四八回日本エッセイストクラブ賞受賞
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感想・レビュー
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あきあかね
23
「人がいつまでも海を眺めているのはなぜだろう。寄せては返す単調な営みのうちに、たとえば永遠と一瞬、無限と有限といった相反する観念を、二つながら同時に感じとっているためかもしれない。眼前にひろがるはてしない海原が、立っている自分の足元からはじまっているという不思議さ。次から次へと打ち寄せてくる永遠の波濤が、白く泡立ちながら消えてゆくというこのはかなさ······。」 古今東西の書籍に通じた該博な知識から繰り広げられる本にまつわる話の数々。時代も場所も自在に超えた話はどれも面白く、余情に満ちた静かな語り口⇒2020/06/26
ishii.mg
1
この著者はじめて読んだがくせになりそう。古今東西の本にまつわる様々なエピソードを惜しみなくちりばめて新たな小品に仕立てるわざはすばらしい。ディレッタンティズムにとどまらずになんというか登場する人々や本に対する愛情が感じられる。2019/08/11