出版社内容情報
精緻きわまりない究極の〈私小説〉は、父の遺骨探しの旅から始まる。過去・現在・未来が相互嵌入式に複雑に重なり合いながら言語は歴史をはらみ、アカシアの葉がそよぐとき、小説が生まれる。本書は、作家としての自分の〈起源〉にさかのぼる、クロード・シモン版『感情教育』。待望ひさしい長編小説。
内容説明
精緻きわまりない究極の「私小説」は、父の遺骨探しの旅から始まる。過去・現在・未来が相互嵌入式に複雑に重なり合いながら言語は歴史をはらみ、アカシアの葉がそよぐとき、小説が生まれる。本書は、作家としての自分の「起源」にさかのぼる、クロード・シモン版『感情教育』。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zumi
17
立ち込める霧で視界は覆われ、何処かから轟音が聞こえてくる。知覚できる唯一のものは、言葉の無限の連なり...... 息もつかせぬ文体、決してスピーディな展開ではない。むしろ目立つのは執拗に細部に拘った風景描写だ。どこまでいっても終わることのない戦いがある。それは引き伸ばされた「戦準備」と「敗走」...... 親子はひたすらに、狂気によって目眩を感じる。冷たすぎるあまり、熱さと痛みをもって酷い凍傷を負わせる、そんな小説。金井美恵子推薦の「究極の私小説」、読まないという選択肢はない。2014/03/18
凛
13
イメージの奔流。時代が章毎に大枠として分けられてるが、目安でしかない。1ページ丸々句点の無い長い文章や、文中に挟まれる注釈()の中にある注釈()。その中で未来・過去・現在を同時に行き交っている様は確とした印象を与えないようで、断片的だからこそ逆に生々しい映像を脳髄に送り込んでくる。それ故ある種の集中力と相性が必要で、今の自分には無理だったP156で放棄。またいつか挑戦したい。<だいいち、現実がこれほどにもフィクションを超えるというのに、どうして作り話を書く必要がありますか/インタビューより>2014/01/05
mstr_kk
6
3読目。僕のいちばん好きな小説のひとつ。今回もグッときた。平岡篤頼さんの訳も本当に素晴らしく、読んでいて陶然とする。ひとりの人間の人生に、時間や空間を超えていろいろな方向から、いろいろな人の思いや行動が流れ込んできている様が描かれており、非常に感動的だった。2014/05/02
mimei
2
《究極の私小説》とあったが、最初の数十ページは酷く読みにくく、途切れ途切れにしか読めなかったが、いったん小説の流れに乗ってしまうと、たらたらと浅瀬に潜るように描写のリズムに引き込まれ、どこで息継ぎをしたらいいのか分からなかった。2018/01/10
つーさま
0
巻頭にあるエリオットの作品の一節が示唆するように、過去・現在・未来、あらゆる時空間が互いに絡まり合い、繰り返す中で、戦争の中に埋もれた大きな歴史と自分の記憶を辿る小さな歴... 2012/11/15