ひと月の夏

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ひと月の夏

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  • サイズ B6判/ページ数 161p/高さ 20X14cm
  • 商品コード 9784560044537
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

1920年の夏のある日、英国ヨークシャの田舎の小駅に一人の若者が降り立つ。村の教会の壁画修復にやってきた彼、バーキンは、第一次大戦で心に深い傷を負っていた。静かな村でも主人公のひと夏の経験を柔らかな筆致で描き心にしみる名作。ガーディアン賞受賞作品。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

まふ

100
しみじみ感を抱きつつ本を閉じた。英国のヨークシャーの片田舎で起こったささやかな「出来事」なのに、読者に「やっと巡り会えたような世界」のような気持にさせるのはなぜだろうか。戦争で傷ついただけでは理解できない主人公のパーソナリティ。妻に逃げられ、地味な美術品修復という仕事を選んで不足感も抱かない地味な性格、巡り会った最も大事な恋人に対して愛の応酬もできず村を離れる男…、どうも世の男たちの「心のふるさと」的な無常観がこのトムに体現されているように思える。これからも読み返すべき小品である。G485/1000。2024/04/14

NAO

71
ヨークシャの小さな村の壁画を復元するためにやって来た戦争後遺症に苦しむトム・バーキンが、村で過ごしたひと夏が静かな筆致で描かれている。塗りつぶされた壁画を浮かび上がらせる作業は、戦争という地獄で固く閉ざされてしまったトムの心が解きほぐされていく過程とリンクしている。だが、浮かび上がってきたのが地獄の図とはなんとも象徴的だ。素朴な村人たちとの触れあいで、心の平穏を取り戻していったトム。だが、彼は二度とその村には戻らなかった。そこは、一度離れたら二度とは行けない夢の地だったのだろうか。2020/06/10

Shinya Fukuda

1
第一次大戦に通信兵として従軍し心に傷を負ったバーキン青年はヨークシャの教会の壁画の修復を依頼される。ほぼ同時期に墳墓の発掘を依頼されていたムーンと出会う。ムーンも戦争で心に傷を負っていた。ヨークシャーの美しい自然と純朴な田舎の人々との交流によって戦争の傷は徐々に癒されていく。田舎の人々に中に牧師の妻アリスがいた。奇跡的に美しい人でバーキンとは相互に意識するようになるが後一押しのところになって躊躇してしまう。出ていった妻のヴィニーから帰ってきて欲しいと手紙が届きバーキンはオクスゴトビーを去り記憶を封印する。2022/09/25

かとう あき

1
田園風景と宗教2013/07/25

takeakisky

0
美しい回想。地獄へ行き、戻ったトム。ムーン。心地よい人と人との距離感。曲がらなかった曲がり角。淡い後悔。過去に対する評価をせず、封印された部屋として提示する抑制が全篇を覆う。修復を請け負う壁画の見せる不可解な謎。愚かな戦いに赴き、決定的に損なわれたものを持ち帰り、神に祝福された土地には埋葬されなかった中世の画家とトムをうっすらオーバーラップさせてみせ、この少ない頁数の中で幾重にも感じられる深さを出す。ストーリーから遠い未来に位置する現在のトムに心を寄せつつ、読了。切なくいい本。ブッカーのショートリスト。2023/05/12

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