出版社内容情報
聖ヨゼフの祭りの前夜、シチリアの小さな町で、殺人事件がおこる。事件を捜査する若い警官の働きによって、その死の裏にはマフィアの影がちらつき、犯人は警察の内部にいることが判明する。真実を追求する警官の身に危険が迫る。その時、一発の銃声が鳴り響く……。
内容説明
聖ヨゼフの祭りを翌日にひかえ、町中が大騒ぎする前夜、シチリアの小さな町で、殺人事件がおこる。事件を捜査する若い警官の働きによって、その死の裏にはマフィアの影がちらつき、犯人は警察の内部にいることが判明する。真実を追求する警官の身に危険が迫る。その時、一発の銃声が鳴り響く…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
133
ちびっ子のマフィアの話じゃない。本場とも言えるシチリアでの、日常に起こった殺人。本当の犯人は見つからず、むしろ見つけてはいけない。公然の秘密には触れてはいけない。損をするのは、愚直な者たち。愚鈍な正直者であってはいけない。人間関係の機微を知らずに、物事に目ざと過ぎてもいけない。見えないふりをして通り過ぎなくてはいけない。巨大なマフィアじゃなくても、マフィアなような奴らはたくさんいるから、その中で生きていく術をまず覚えていかなくてはいけない。でも、悲惨でなく、陽気さの混じる暮らしがシチリア、のように思えた。2017/01/15
まふ
97
短編「小さなマフィアの話」と中編「人それぞれに」所収。いずれも「イタリアらしい」読者をからかっているようなストーリーだ。殺人犯人が見つからず、巡査長が見つけたと思ったら…。あるいは村で2人の殺人事件が発生し、事件を追及する学校教師が核心に触れそうになった段階で死体で見つかる、というところで終わり。どうやら両方ともマフィアが絡んでいるらしいが、その匂いがするだけで「あとは読者が勝手に想像せよ」と放り投げだされる。いわば「オープン系ミステリー」とでもいえようか。G461/1000。2024/03/11
扉のこちら側
86
2017年122冊め。【276/G1000】G1000対象なのは2篇めの『人ぞれぞれに』の方。政界にまで食い込むマフィアの怖さを静かに描く。著者はマフィアにとどまらず政治や教会の腐敗の原因を探ろうとしたオピニオンリーダーだったというのが感じられる。表題作の方は、邦訳タイトルでネタバレされているが、作中では一言もマフィアという単語は出てこない。殺人事件の捜査の中でマフィアの影がちらつくが、誰もそれは口にしないという。(続) 2017/02/05
NAO
65
シチリア島は、貧しい島だ。そういった島では、悪がはびこる。マフィアが、島で幅を利かせるようになる。「イタリアはおめでたい国なので、方言的な意味合いの、土地のマフィアを撲滅する闘いがはじまったときには、もうすでに、標準語規模の別のマフィアができあがってしまっている」とは、なんともすさまじい。何か事件が起きても、裏事情を探ってはいけない大人の事情。スケープゴートにされてしまった者こそ不運。「ちいさなマフィアの話」「人それぞれに」の2編のうち、「人それぞれに」がガーディアン必読小説。 2018/10/15
空猫
21
警察への一本の電話から物語が始まり、それが殺人事件へと淡々と短い文章で語られる。どうなっていくのかわからないままぶっつりと終止符が打たれてしまう。マフィアが地元に密着(教会、警察含)しているのはイタリアあるあるなのか。誰もその名を口にしないが確実に影の見える存在なのだ。描写としては面白いけれど日本人の自分にはイマイチピンと来なかった。2018/01/31