出版社内容情報
鏡の中に現れる美しい青年に恋をし、やがて悲しいフィナーレをむかえるエウラリアをはじめ、何ものかに魅せられ、囚われの身となり、遥かな迷宮に迷い込んだ者たち。幻や想像の世界に現実以上のものを見てしまった人間の悲劇が、イタリアの若き女性作家の手からダマスク織りのように紡ぎだされる。
内容説明
鏡の中に現れる美しい青年に恋をし、やがて悲しいフィナーレをむかえるエウラリアをはじめ、何ものかに魅せられ、囚われの身となり、遙かな迷宮に迷い込んだ者たち。幻や想像の世界に現実以上のものを見てしまった人間の悲劇が、イタリアの若き女性作家の手からダマスク織りのように紡ぎだされる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
32
#日本怪奇幻想読者クラブ 4篇の中短編が収録されており、その全てが「迷宮」に彩られていると言ってもよいだろう。表題作「エウラリア」では、旅の一座に加わった田舎娘が、鏡の世界に現れる男女に魅せられその真似をする内に大エウラリアと言う伝説の女優となる。合わせ鏡に映し出された部屋は迷宮を作り出し、こちら側には存在しない人物を現して彼女を虜にしたのだ。「石の女」は死者のために地下の迷宮を彩る彫刻を作り続ける教団に属する青年が、素材を得るため人里に出て生身の女の美に惑わされ教団を去る。しかし彼の想いは通じないまま…2021/05/13
藤月はな(灯れ松明の火)
20
集団、家族、牢獄などただでさえも最少の閉じ込められた世界に紛れ込んだ不穏分子。それは、対象者を世界から逸脱させて、更に閉じていて無限の虚無とも通じる世界へと誘い、永久に囲む。そして最小の世界に留まるか戻った者にあるのは喪失や虚無からの絶望。世界に留まるが故に移ろうものと閉じた世界へ自ら閉じ込められるが故に永久となるもの。表題作で謳えなくなり、鏡の迷宮に閉じこもるようになってしまったエウラリアに江戸川乱歩の「鏡地獄」を連想してしまいました。2013/05/31
ミツ
9
表題作を含め4つの短編を収録。湖と森に囲まれた城、光射すことのない洞窟、荒涼とした監獄、どこともいつとも知れないところを舞台に語られる、さながら寓話のような幻想怪異譚。鏡の中の美少年、美しい女の腕、哀切なバイオリンの調べ…抗いがたい崇高な美の魔力に魅入られた彼ら彼女らが破滅へと落ち込んでゆく様は恐ろしくもあり、哀しくもあり、心にじわっとした染みが残るようであった。幻想的なイメージを至るところに散らしつつ、それが現実へとぐるっと反転する恐怖は、古典的ではあるけれど、根源的なものなのかもしれない。2017/09/18
きゅー
2
芸術に翻弄される人々を描いた短篇集。26歳のときに書いたデビュー作とのことで、アイデアに頼りすぎている気はしたけれど、同時に印象に残る作品でもありました。