感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BIN
4
死に際にいるハドリアヌスが自分の半生を回想した作品。本当にハドリアヌスの回想録かというくらいに内面を描いているものの長いし、改行があまりなく読みくいし、難しい。もっと知識を得てから読みなおしたほうがいいかなあ。2016/04/16
鐵太郎
2
ローマ五賢帝の一人です。ローマ帝国に、黄金の時を築き上げた皇帝です。その皇帝が、晩年にわが半生を振り返る回想録のかたちを取って描かれたのがこの本。広大なローマ帝国を休みなく視察して廻り、帝国の統治を現場で行ったその行動力、政治力。詩人のフロルスとのしゃれた掛け合い。後継者を選ぶときの、あまりに場当たり的、刹那的な選択。歴史とは、人が織りなし作り上げるものなのか。面白い。こういう見方もありか。2006/03/21
彩也
1
《神々はもはやなく、キリストはいまだない、ひとり人間のみが在る比類なき時期》、死の床についたハドリアヌスは、己の一生を回想する。「知識人・旅人・詩人・恋人」であり、何よりも「皇帝」であった一人の男の生が、男自身の目で(そして死を傍らに置いて)語られる。「さまよえる いとしき魂」の声は、思索的で詩的、味わい深い。「一九世紀の考古学者が外側からやったことを、内側からやり直すこと」が著者の目的であったという、この小説は、歴史小説の最高峰。ちなみに再読だが、あと数度は読まないと、味わい尽くせない気がする。2012/01/25
catquittyquitty
0
読んでいる途中の、そして読み終わったときの、理想的な読書のかたちを味わった感覚と感動の凄まじさにやられた。本書の序盤で人間観察は自己省察か、他者の観察か、書物を読むことかのどれかのかたちを取らざるを得ず、どれも不完全だというくだりが出てくるが、ハドリアヌスと著者が重ねられ、書物という形で表されるこれはすべてのかたちを兼ね備えているといえよう。そうしたスタイル上の越境や、肉体的/国土的な拡がり、そしてその脆さから半ば逆説的に導かれる魂の実在性によって、人でありながら人を「超え」て現出するハドリアヌスの姿は2018/05/29