感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
85
シュールで突拍子もないイメージがぎっしりと詰め込まれた小説で、読者を圧倒する。題が示す通り残酷で、エロチックで、この世の常識に挑戦するようなところあるので、読者を選ぶ小説と言えるかもしれない。作者のマンスールについては全く知らなかった。解説者によると、シュールレアリスムの最も重要な作家の一人と言うことだ。「ジュール・セザール」は歪んだ牧歌的な田舎の世界が、降り続く雨によって黙示録的な世界に変容する。「浮き島」は病院が舞台の小説。プロットらしいプロットはなくて、患者のグロテスクな姿が延々と描かれる。→2018/02/02
yn1951jp
34
女性原理があっけらかんとして、原初のままの海底に伸びひろがる母なるもののイメージが、形も定まらずに君臨している世界。「自動記述」の新形式によってもたらされた、法外な隠喩の王国。『ジュール・セザール』の世にも残忍で甘美な物語は、ヨーロッパ文化全体への反省をこめて読まれることを求めている。サナトリウムの抑圧的な建物さえ肉の花に変えようとするジョイスの戦略はナジャ、レオノーラ、ウニカなど病院に幽閉されたシュールレアリスム周辺の女性たちをも救いうる新しい女性の文学の誕生を告げるものかも。(巌谷1984.8.)2014/12/20