内容説明
百年戦争の最中、美女の誉れ高い伯爵夫人に恋い焦がれるエドワード三世の様と騎士道の美徳を称えた歴史劇。
著者等紹介
河合祥一郎[カワイショウイチロウ]
1960年生まれ。東京大学英文科卒。ケンブリッジ大学英文科博士課程と東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を修了、両大学より博士号(Ph.D.)取得。東京大学大学院総合文化研究科助教授、放送大学客員助教授。専攻はイギリス演劇(シェイクスピア)・表象文化論
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感想・レビュー
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ワッピー
30
最近読了した洋書のエピグラムの引用から興味を持ちました。100年戦争前半のクレシーの戦い、ポワティエの戦いで英仏両王の明暗とエドワード黒太子のデビューを約めて活写。フランス王の正統性をめぐる争い、スコットランドを使って背後から衝くフランス王の戦略にもかかわらず、イングランドの大勝利に終わる流れですが、主役のエドワード三世が微妙に黒太子に冷たい感じがするのもあれこれ裏読みをしてしまいそう。コミック「ホークウッド」(トミイ大塚)がまさにこのテーマを扱っています。近年ようやくシェイクスピア作品と認められた由。2020/08/13
松本直哉
24
百年戦争の雄エドワード王が無理やり臣下の伯爵夫人に言い寄るところを、彼女が王の命令より神との結婚の誓いが優先すると言って命がけでパワハラを拒絶するところが前半のハイライトならば、後半のそれは籠城のカレーの町から和議を求めて出てきた市民たち(ロダンの彫刻で有名)を王が処刑しようとするのを妃が諌めてやめさせるところ。好色と残虐という英雄の二大悪徳がともに女性の力で避けられているのが面白かった。シェークスピアの作であることがごく最近明らかになったとのことだが、読みごたえのある作品でした。2018/09/30
風に吹かれて
13
「一部を書いたということになれば、シェイクスピア作品群に収めようというのが、これまでの慣習」なのだそうだ。文体、語彙などについて多くの研究者が研究し、1990年代後半になって全集に本作が収められるようになったとのこと。 本作はシェイクスピア初期の作品。これまで読んだ作品と比べると緊密度に欠けるような気がする。前半のエドワード三世がソールズベリー伯爵夫人を口説き落としたくて仕方ない場面と後半の対フランス戦争の筋立てが劇としてのつながりがないような気がする。⇒2021/06/18
有沢翔治@文芸同人誌配布中
10
最近になってようやくシェイクスピアが書いたと解った作品。エドワード黒太子の親父、エドワード三世が主人公だが、エドワード黒太子も出てくる。前半のエドワード三世は汚い手を使い、夫人を寝取ろうとするが、諌められて改心。人間ってそんなに遺恨なく付き合えるもの?http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51499514.html2018/08/04
rinakko
8
初期の歴史劇で、シェイクスピアの作品として認められたのがまだここ数十年のこと、共同執筆説と単独執筆説があるらしい。エドワード三世はイングランドにおける偉大な王のひとり(ガーター勲章の創始者)だが、いま一つ名君という描き方はされていなくて、当時のチューダー朝への配慮だったのかも知れない。前半における伯爵夫人への強引な求愛は如何なものか。黒太子は流石に凛々しくて、訳者による“ハムレットと全く同じ死生観”という指摘にもなるほど…と。2025/04/21