出版社内容情報
1987年度ノーベル文学賞受賞者、アメリカに亡命した天才ロシア詩人ブロツキーの処女戯曲。古代ローマでありながら最新のテクノロジーが駆使されているSF的な都市の塔に幽閉された2人の人物によって、時間と空間、眠りと夢などの哲学的テーマが恐ろしく日常的な卑語俗語で語られる。
内容説明
1987年度ノーベル文学賞受賞の天才詩人が紡ぎだす摩訶不思議な劇空間。これはSFであり、形而上学であり、コメディである。傑作戯曲。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
酒井一途
3
こういう言い方は嫌なのだが、非常に難解である。ノーベル文学賞を受賞した詩人の処女戯曲で二人芝居。ソ連体制への皮肉など暗に込められている政治的な意図への解釈がまったく及ばない。語られる時間と空間の哲学も、わずかしか読み取れなかった/この作品において彫刻が重要な位置を占めているのは、彫刻が位置している空間のなかに永遠の時間を閉じ込めるという特性を持っているからであって、「空間自体の中に、人が死んでいなくなる場所が含まれている」ように、時間軸の中に場所を存在させることができる稀有な例外の一であるから、だと思う。2012/10/28
きゅー
2
戯曲。今から数百年後、最新テクノロジーと古代ローマの慣習が入り交じる世界で、巨大な塔に二人の囚人が収容されている。彼らは罪を犯したわけではないが、終身刑を宣告され、自由を奪われている。しかし、とブロツキーは問う。自由とは? 空間的に自由に行動できない人間は本当に不自由なのか。いや、もう一つの尺度がある。それは時間への逃走だ。詩人は、新しいリズムを、時間を作り出すことが出来る。ノーベル文学賞を獲得した詩人による、一筋縄ではいかない作品。塔をソ連体制と見ることもできるし、あるいは私は詩による世界の拡張と見た。2011/10/24
Э0!P!
1
ローマ人的合理的政策により、終身刑となった二人の囚人が、時間と空間について語り合う。古典詩人は大理石の体をもって部屋に乗り込んでくる。肉体の体に固執するプブリウスは、脱出を自由と捉えるが、ローマ貴族たるトゥリウスは、睡眠薬を賭けた勝負のために、手に入れた身体的自由をいともたやすく手放す。そして睡眠薬を手にして、眠りと時間の旅を自由に楽しむ。2022/02/26
★★★★★
1
亡命ソ連人のノーベル賞作家による詩的戯曲。著者の境遇を詠み込んだディストピア文学として解釈することもできるけれど、時間性と空間性を中心とした二項対立の一群を言葉の力で脱構築してゆく作品と読みたいかな、個人的には。まあどっちの解釈も解説で提示されてるんですけどね。2012/02/14
メルセ・ひすい
1
13-58 赤18 兪一の処女戯曲 `64ソ連の言う、徒食者ブロツキーは5年間の強制労働の判決をうける。この戯曲はソ連社会の隠喩と見られる「塔」(古代ローマでありながら最新のテクノローが駆使されているSF都市の塔)の牢獄で二人の囚人の対話という形で全面的に展開する詩的思考の散文で書かれている。塔に幽閉された二人の囚人が哲学的なテーマを日常的な卑語・俗語で語る。それは全体主義体制に対するある種の寓話を織り込んでいる・・。また逃避する手段・力になることを著者の経歴から解釈できる・・・2010/04/02
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