内容説明
１６００年、バイエルン公国の首都ミュンヒェンで六名の男女が公開の場で火刑に処された。魔女裁判史の中でも特に有名なこのパッペンハイマー裁判の調書を基に、当時の都市の様子やそこに生きる人々の暮らしぶり、また、同時代人が抱いていた魔女に対するイメージを詳細に描き出した一級の好著。
目次
第１章 塔
第２章 街道
第３章 高き所
第４章 谷間
第５章 奈落
第６章 水車小屋
第７章 魔女の集会
第８章 拷問室
第９章 処刑場
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまはるか
7
ページを繰る苦しさに耐えて読んだ。自白するまで続けられる拷問によって善良な市民が魔女に仕立てられ、苦し紛れに密告された市民がまた捕えられ、その自白によってさらに捕えられる。拷問に耐えるものは一人とてなく一人の自白にはじまった魔女が鼠算で増えていく。１６世紀にドイツであった魔女裁判の記録を読解したものの邦訳。拷問も残酷なら火刑も残酷で死なないように苦痛を与えて最後は生きたまま火あぶりにされる。１０歳の子供を親の処刑に立ち会わせ反応を観察する。宗教の一側面としての紛れもない史実である2020/01/09
かいせ
1
17世紀にバイエルンで実際にあった一家魔女裁判から処刑に至るまでをめぐる周囲の人々の思惑と当時の思想、社会情勢。それらを拷問と処刑の凄惨な描写を挟みながら作者はただ静かに追いかけていきます。そこには作者の肩書きである作詞家の顔というより、かつて目指したという法律家の面が垣間見えます。 「我々が（過去に生きた）彼らに下す判断に間違いが生じるのは必然的であろう。なぜなら、当時のようにはもはや考えることも、信じることも、感じることもできないからだ。」作中より。2012/03/03
