出版社内容情報
英雄か異端か。少女を火刑に処して25年、その正当性を問い直す裁判の中で、幼年期の生活や最期の姿、前判決を破棄するに至った様子をドキュメントふうに構成して描く、第一級資料。
内容説明
火刑に処せられて25年後、数多くの証言から浮かび上がる赤裸々な少女の姿。
目次
序 復権裁判まで
証人たちの証言(前裁判の審理;幼いころの証人たち;シノン騎馬行の仲間たち;シノン到着とポワティエの判事たち;オルレアンにおける証人たち;日常生活の証人たち;最初の牢獄生活;ルーアンの証人たち;判事たちを裁く;心正しき人々)
審理の終幕
著者等紹介
高山一彦[タカヤマカズヒコ]
東京都出身。1924年生まれ。1948年東京大学文学部西洋史学科卒業。フランス史専攻。成蹊大学名誉教授。フランスオルレアン市立「ジャンヌ・ダルク研究センター」名誉委員(1974年~)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
卯月
3
異端者として処刑されたジャンヌの前裁判を破棄する裁判。『ジャンヌ・ダルク処刑裁判』は裁判記録そのままで、激しく読み難かった記憶があるが、本書は、「証人たちの証言」以降は思ったより読み易かった。『処刑裁判』では判事たちがジャンヌの揚げ足を取るため重箱の隅をつつくような質問を繰り返しているのに対し、『復権裁判』の証人たちは(質問事項があるとはいえ)比較的自由にジャンヌへの思いを語っていると思う。必ずしも裁判の進行順ではなく、編著者の解説付きで、ジャンヌの人生の場面に沿って証言を並べ替えてくれているのも有難い。2013/08/13
j1296118
2
無益な苦労はせず私の本を訳すがよい、との編者の奨めは恐らくは尤もなものなのだろう。と窺える纏め方に解説・註の充実、読み進み易さ。引き換えとして多少誘導されてる気分にならないでもないが、訳者後書きを見ると記録そのままなら挫折しかねないとも思うのであった。 ポアティエの調書、処刑裁判記録に残る長大な物でない大文字で六~八行程度の改悛誓約書、死亡していたロベール・ド・ボードリクールやラ・イール、ある意味で何よりピエール・コーション。残っていない、当時既に失われていたものが惜しい。2014/09/03
じゅげむ
0
一次資料が翻訳で読める。すばらしい。2012/08/05
Yosuke Saito
0
ジャンヌ・ダルクについて歴史研究をするうえで、処刑裁判と合わせて基本となる資料。このような一次資料を日本語で読めるということは驚くべきことで、訳者には頭が下がる思い。デュノワやパスクレルの証言から、15世紀フランスの様子が生き生きと浮かび上がってくる。資料が歴史を語りだす。2011/11/26
kiltcool
0
1431年に火刑に処されたジャンヌ・ダルクが1456年に復権を果たした際の審理の記録。故郷ドンレミの住民や従軍した指揮官、処刑裁判の書記官らの証言によりジャンヌ・ダルクという一人の少女が人間として浮かび上がってくる。このあたり、流行りの小説の手法にも似ていて読み応えがある。最後の火刑に処されるときの証言は涙なしでは読めない。一方、処刑裁判の判事たちの証言は保身のため慎重に徹していて、これはこれで人間臭い。処刑裁判記録と合わせると、優れた一本の小説を読み終えた気分になる。2023/09/24