内容説明
「大量虐殺」はなぜ起きたのか?闇に包まれた圧政者の生涯を追いながら、クメール・ルージュの蛮行と虐殺の真相、カンボジアが見た「悪夢」の実態に迫る。
目次
サル
光の街
反乱軍への参加
カンボジアの現実
胎動
理性の突然死
浄化の炎
黒服の男たち
未来完了
世界のお手本
スターリンの病原菌
崩壊した理想郷
著者等紹介
山形浩生[ヤマガタヒロオ]
1964年生。東京大学工学系研究科都市工学科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金吾
32
ポル・ポトやクメール・ルージュを知りたくて読みました。知らない国のため名前が覚えられず人物関係の掌握に苦労しましたが、ボリュームがあり知りたいことが少しわかりました。しかし民族性に起因させていることや何故あのような統治をしたのかの本質はわからないままでした。2023/01/26
さえきかずひこ
10
名著。カンボジアの20世紀の歴史(1930年代から1999年までが取り扱われている)を知りたい人は必読。本文が700ページ近くの大部のため、誤脱字が散見されるが読むには支障無い。訳者あとがきが、原著に批判的で読ませる。クメール・ルージュの蛮行をジェノサイドと見なすかどうか問題、そしてその原因をカンボジアの国民性に求めているがそんな単純な話ではないだろうという批判。共に重要である。また、ポル・ポトが圧倒的なカリスマであったことは分かるが、いったいどういう人物だったのか謎が深まる読後感も特筆に値する。長いです2017/06/21
TK39
6
90年代初頭にカンボジア和平がニュースになっていたが、背景はあまり知らず、以前から気になっていた。隣国に蹂躙されてきたカンボジア人はベトナム、タイとも違うメンタリティ、文化を持つ。ベトナム戦争終結により米国がカンボジアから撤退したことを自らの力によると過信し、急進的な独自の共産主義を導入したが、ポルポトは共産主義にも国の統治にも全くの素人であった。そこにベトナムへの恐怖心もあり、破滅に向かっていった。2024/05/06
うぃっくす
3
こりゃ長い。400ページ目くらいでやっとクメールルージュ統治下の話になる。にしてもこんな分厚い本を読んでなおポルポトがどういう人物だったのかつかめなかった。カンボジアの歴史全然知らなかったけどポルポト以前のシアヌークの頃から人いっぱい殺されてたのね…読んでたら普通に生首持ってる人の写真とかでてきてびっくりした。ポルポトは果たして意図せずに150万人を殺したのかとか虐殺の原因をカンボジアの文化、国民性に求めたりとかについては議論の的になってることもあるらしい。2019/06/07
PukaPuka
3
「民主カンプチア」なるものがなぜ生成したのか、この本を読むことで少なくとも前よりは理解できた。隣国ベトナム、タイとの因縁の争い、さらに米中露も絡み、共産圏内での対立も含んだ複雑な政治的駆け引き、クメール人の矜持と怠惰、上座部仏教の影響、都市住民と未開の地の貧農という二つのカンボジア、などが背景にある。その中で、ポル・ポトは毛沢東すら実現しえなかった貨幣の廃止を含む原理主義的な共産主義を成し遂げれば、カンボジアは強く純粋になり共産主義の美徳の鑑として再び出現すると考えたのだった。Oh là là !2016/02/25