感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
富士さん
5
一人暮らしを始めてはじめて入った古本屋で、ボロボロだった本書を何気なく買ったのが出会いでした。よりボロボロになったので処分しようと思ったのですが、当時の書き込みを読んでいると捨てがたくなりました。ドイツの強制収容所と違って、ロシアのものは自分の国のものであるというのが全否定しがたいところなのだと思います。特にスターリン後の洗練された姿は、空気と常識によって行われる暗黙的な収容を加味したものであり、むき出しの暴力による強制収容もその延長線上にあったとすれば、現在の日本も別次元のことだとはとても言えません。2021/06/26
BLACK無糖好き
4
著者はワシントンポスト論説委員。本書は2004年ピュリッツァー賞とダフ・クーパー賞をダブル受賞。グラーグ(ソ連集中収容所)はボリシェヴィキ革命の中に生まれ、ソヴィエト経済の重要な一環にまで発展し、スターリン死後に解体される。本書ではその歴史を余すところなく詳述すると共に、収容所での生活・労働実態も詳細に再現している。そして多くの名もなき犠牲者たちへの鎮魂歌でもあろう。よくぞこれだけの労作を書き上げてくれたと、何とも言いようのない読後の深い余韻に浸れる。自分にとってはそういう類いの本です。2015/08/24
タキタカンセイ
3
『ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅』に対称するように書かれたソ連の強制収容所グラーグの本。同じように重い内容と重い重量。想像を絶する地獄のような、いや地獄そのもの、地獄よりも悲惨かもしれない世界。〜本書が書かれたのは決り文句が言うように「それが二度と起きないようにするため」ではない。本書が書かれたのはそれがほとんど確実に再び起きると思われるからである〜ウクライナ危機の今、著者の言葉は限りなく重い。2022/07/16
Arte
1
何度読み直しても背景が分からないために今いち理解できなかった『収容所群島』に比べると、非常に読みやすい。おまけにスターリン死後のグラーグについても書いてある。今のロシアは、偉大な国だったのに崩壊したのだから、今さら死者を鞭打ちたくないという感情から、グラーグについて目を背けがちだが、グラーグシステムが旧共産国中心に文化として普及し、今も北朝鮮に残っていること、この歴史を知らないために、同じことが繰り返される可能性があることにも言及されている。あまりの重さに最初と最後は読みたくなくなることを除けば、お勧め。2015/01/05
m_a
1
正直テンションの下がる本ですが、さすがピュリッツァー賞をとっているだけあって内容は充実してます。強制労働は実は生産性が低いとか、収容所でも戦時中は士気が上がったというあたりは社会人にとって参考になりました。2014/01/13