内容説明
同級生みんなで、太平洋戦争が始まった年に入学した国民学校(今の小学校)の思い出を、孫に伝えようと思って書きました。今では考えられないけれど、食べ物も燃料も不足していたので、デンデン虫やモグラまで食べたり、学校の便所の糞尿を使ってサツマイモを育てたり、遠くの山まで薪運びに行ったり、先生まで戦争に行かされたり…勉強らしい勉強はできませんでした。だけど今から思うと、先生を困らせるほどみんな元気でした。苦しくもくじけず、人を思いやって生きていく、人生の大切なことを教えてもらったように思います。
目次
竹の子、栗の子の入学
大戦争がはじまった
おちんちくらべ
生きものは友達?
学校の自給作戦
デンデン虫もモグラも食べた
わらぞうり
もらい風呂
先生の出征
十六歳の大池先生〔ほか〕
著者等紹介
熊谷元一[クマガイモトイチ]
明治42年(1909)7月長野県下伊那郡会地村(現阿智村)に生まれる。長年小学校教員として勤める一方、童画家を志し、昭和11年(1936)から故郷の人々や子どもたちの生活を優しい眼差しで撮り続ける。昭和20年10月智里東国民学校に赴任し、執筆者らの担任となる。それらの写真や童画は阿智村昼神温泉郷にある「熊谷元一写真童画館」で保存・展示されている。昭和30年(1955)『一生年 ある小学校教師の記録』(岩波書店)で第一回毎日写真賞受賞。平成6年(1994)毎日新聞出版文化賞受賞、文部省「地域文化功労者」表彰
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感想・レビュー
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ポンポコ
1
戦争経験はそのときの年齢や住んでいた場所など立場によって大きく異なる。本書は長野県下伊那郡智里村の智里東国民学校に1941年に入学した生徒と先生が当時を振り返って書いた作文集。食糧難とはいえ、当時まだ物心ついたばかり子どもたちなので、山や川のものを工夫して食べていたことや勤労奉仕の様子は割とやんか(やんちゃ)な思い出として描かれていて、悲惨さよりも逞しさを感じる。大阪から疎開して来た子の都会とのギャップや、戦後に肉親が帰ってこなかった子の話。個別具体的な記憶だけに一般論で語れないリアルさがある。2017/08/16