内容説明
世紀末の虚無的世相との闘いのなかで、三島由紀夫の二元性を直視し、保守思想の大いなる源流G・K・チェスタトンの言説に想いを馳せつつ、ニヒリズムを超えて生きるための真正の知を思想の言葉で模索する、東大教授辞任後、初の本格的評論集。
目次
明晰さの欠如―三島由紀夫
保守の情熱―G・K・チェスタトン論
清浄な魂―田中美知太郎論
能動的ニヒリストの生涯―清水幾太郎論
たった独りの戦死―吉野正弘論
声なき声の人―岸信介論
『哲学談議とその逸脱』を読んで
「言葉の弓射る」精神の書『福田恒存全集』刊行に寄せて
“発熱”くりかえす三島由紀夫論
他者のなかの神―吉本隆明と江藤淳
書評1985‐89
言葉のピュエリリズム
言葉のメモリー
世代間の関係、それが時代である
幸福論の必要について
宗教心の物理学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ドクターK(仮)
4
本書で語られる数々の人物論や書評から浮かび上がってくるのは、作品の内容と作者のパーソナリティーは分かち難く結びついているということだ。考えてみれば当たり前のことではあるが、著者はこのことをかなり意識しているように思える。例えばそれは、著者が清水幾太郎や田中美知太郎といった人物と言葉を交わした際に感じた、彼らの独特の雰囲気や印象をかなり主観的に描いていることからも伺える。何を書くにしても、作者のパーソナリティーがその作品に及ぼす影響は、一般に考えられているよりもはるかに大きいのかもしれない。2017/02/15
草生やすな
0
虚無主義は、克服出来るようなものではなさそう。克服しようとする姿勢を、なんとか構えようとするうちに寿命がきそう(悲観)。2013/04/29