出版社内容情報
業績評価の指標として機械的に使われる傾向のあるインパクト・ファクターについて、具体的なデータに基いて検証し、警鐘をならす。
目次
プロローグ 間違った指標で評価される科学者たち
第1章 インパクト・ファクターとは何か(インパクト・ファクターの定義;インパクト・ファクターの起源 ほか)
第2章 インパクト・ファクターの誤用とその問題点(雑誌のインパクト・ファクターからではわからない、個々の論文の被引用回数;分野によって大きく異なるインパクト・ファクター ほか)
第3章 インパクト・ファクターの誤用のもたらすもの(個々の研究者による論文の被引用回数の操作;出版社や編集委員によるインパクト・ファクターの操作 ほか)
第4章 インパクト・ファクター偏重主義根絶への動き(インパクト・ファクターの不適切な使用に関するEASE声明;研究評価に関するサンフランシスコ宣言)
エピローグ
著者等紹介
麻生一枝[アソウカズエ]
成蹊大学非常勤講師。お茶の水女子大学理学部数学科卒業、オレゴン州立大学動物学科卒業、プエルトリコ大学海洋学科修士、ハワイ大学動物学Ph.D.専門は動物行動生態学。オハイオ州立大学ポスト・ドク研究員、お茶の水女子大学人間文化研究所研究員、長浜バイオ大学准教授を経て、科学ジャーナリズム海外修行準備中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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香菜子(かなこ・Kanako)
27
科学者をまどわす魔法の数字,インパクト・ファクターの正体---誤用の悪影響と賢い使い方を考える。麻生 一枝先生の著書。研究者や科学者の評価がインパクト・ファクターだけで決まってしまうのは本末転倒で不公平。インパクト・ファクター誤用の悪影響は大きい。インパクト・ファクターが誤用されることをはじめから計算してインパクト・ファクターを悪用する研究者や科学者は罪深い。研究者や科学者なら誇りとプライドを忘れないでほしい。インパクト・ファクター誤用の悪影響を心から心配している麻生 一枝先生の熱意が伝わってきます。2022/08/17
キリル
10
図書館員が雑誌を購入する際の参考指標として考案されたインパクト・ファクター(IF)がその本来の意図を超えて研究評価の指標としてどのように誤用され、研究者達に影響を与えているのかを解説した本。IFの問題点を具体的なデータに基づき指摘していて理解しやすかったです。やたら姉妹誌が多いそのカラクリも興味深いものでした。IFの操作法がこうもあるのかと悲しくなる半面、学術誌の生き残りへの必死さも垣間見えました。研究倫理にも触れられており、特に研究の再現性が危惧されるという状況を深刻に捉えるべきであると思いました。2021/07/31
takao
2
インパクト・ファクター重視が様々な不正を生む。再現性の危機。2021/09/09
渓流
1
科学者だけでなく、一般市民、科学ジャーナリズムを惑わす指標ですナ。唯一真なるものは物理化学に医学生理学の発見であって、社会科学を初めとする人文科学がいかに御託を述べようとそれをこじ付けとまではいわないが、万人を唸らせるものではない。それに客観性を持たせるべく数字の衣をまとわせようともそこには人間のエゴが顔を出す。科学論文の重要度をしめすこのインパクトファクターは言うまでもなく、大学の順位しかり、幸福度しかり、女性進出度しかり。数で表せば客観的というのは大いなる誤解。それを改めて指摘した本。2021/09/17
hayataka
0
インパクトファクター(IF)の定義・計算方法の問題点をあらゆる角度で分析している。そもそも表したいものを適切に表せていないし、出版社などによる操作もできてしまう指標である。そんな指標を科学の評価に使ってしまうことの弊害をよく理解できる。科学の真髄である再現性を揺るがし、信頼性を損ねるところまで来てしまった。欧米を中心にIF至上主義の根絶運動が始まっている。日本での議論や動向も知っていきたい。2023/01/02
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- 和書
- お屋敷拝見 らんぷの本