出版社内容情報
最後通牒ゲームを題材として、進化心理学の考え方を使い、「経済人」ではない人間行動の原理に迫る。
内容説明
見知らぬ人に、なぜ親切にしてしまうのか?自粛警察の心理とは?なぜ、人の目が気になるのか?最古のゴシップって…?数百もの実験からみえてきた、人間行動の不思議に迫る!
目次
はじめに―もっとも不可思議な結果!?
第1章 謎解きの道具
第2章 ホモ・エコノミクスを探して
第3章 「目」と「評判」を恐れる心―なぜ独り占めしようとしないのか?
第4章 不公平への怒り―なぜ損をしてまでノー!というのか?
第5章 脳に刻まれた“力”―裏切り者は、見つけられ、覚えられ、広められる
第6章 進化の光
著者等紹介
小林佳世子[コバヤシカヨコ]
埼玉県川越市生まれ。埼玉県立浦和第一女子高等学校卒、東京女子大学文理学部社会学科卒、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。南山大学経済学部専任講師を経て准教授。専門は行動経済学、応用ゲーム理論、法と経済学。3児の母(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamatoshiuruhashi
42
予想以上の面白さ。本質的には「経済学」であり、心理学的側面も強く内容も濃いのだが、分かり易い文体で丁寧に書かれているため頭にスルリと入ってくる。完全無欠な計算能力を駆使して迷わず最適な選択肢を選ぶ超合理的な人間「エコン」、損得ではそのように行動するはずなのに何故かその行動とは違う不合理・不思議な行動「アノマリー」がまずされ、これをキーワードに話は進む。Aさんは見知らぬBさんと分けることを条件に 1,000円を与えられる。分ける額は任意。Bさんが提示された金額でOKなら二人はその金額を得る→2021/09/27
禿童子
33
話題になることの多い行動経済学と進化心理学の入門書として良くできた本です。高校生が読んでも分かるように、1ページに見出しが必ず1つ以上あり、章の終りには箇条書きの「まとめ」が置かれているので、最後までスムーズに読むことができました。専門用語(最後通牒ゲームやコストのかかる第三者罰ゲームなど)も分かりやすい説明と実例があって、初心者に優しい工夫がほどこされていると感心しました。一見して非合理的にも見える人の行動の理由は?他人の苦悩への共感と敵の苦しみを快感に思うココロが同居する矛盾にも根拠がある?興味津々。2022/07/04
おせきはん
25
最後通牒ゲームを入口として、人間がなぜ経済学の立場からは合理的ではない判断をすることがあるか考察しています。具体的で、かつわかりやすい説明を通じて、一見、合理的に見えない行動に隠れている合理性が明らかにされていて、納得感がありました。2022/10/21
yyrn
23
人の不正は許し難い。ずるいこともしたくない。でも誰にも見られていなければ少しぐらいなら、と行動してしまうのは100%自分の判断だと思っていたが、何万年も続く生死をかけた生存競争の果てに人類が脳に刻み込んだ力によるものだと(最後通牒ゲームや独裁者ゲームなど様々な実験を通じて)解説されると初めは信じ難かったが、本書を読み進めていくうちに、国籍や人種、年齢や性別でも差のでない事象の数々に(案外たくさんある!)そうなのかと思えるようになっていった。喜怒哀楽の感情さえも脳に指示されているのかと思うと、⇒2021/10/20
リットン
13
大学に入って、いろいろな分野の授業を聞いて、いまいちピンとこない中で、この本に出てくるような不合理であり、合理的である人間観を知って、面白いと思ったのを思い出した。その不合理さの中には、怒りや嫉妬のようなネガティブな感情が絡むことは多いけど、それをひっくるめても、人間ほど血縁を越えて協力できる種はいないし、悲観的になる必要はまったくないと個人的には思う。そのネガティブな側面を越えるための一歩が本書にかかれたたくさんの研究の積み重ねによって人間とはなんぞやを知ることなんだろうなぁ。2023/01/11