内容説明
蒟蒻問答は、二代目林家正蔵作といわれる落語の出し物の一つ。蒟蒻屋の六兵衛と旅の僧とのうわべは噛み合っているが、じつはちぐはぐな問答を面白おかしく描く。その根底に、人間の知識の主観性や、相互理解における誤った信念などへの重要な示唆を含む。戯曲形式で社会科学の根本問題をあぶり出す異色作。
目次
第1曲 経済における特殊と一般の逆転(セントペテルスブルグ・ゲーム;パラドックス ほか)
第2曲 蒟蒻問答とゲーム論(蒟蒻問答;「囚人のジレンマ」と「逢引のトラブル」 ほか)
第3曲 市場経済の逆襲(市場均衡理論と社会的ジレンマ;市場の失敗と広域的外部性 ほか)
第4曲 意思決定とナッシュ均衡(最近の話題;ナッシュ均衡の事前的解釈 ほか)
第5曲 個人と社会(個人主義;「主義」 ほか)
著者等紹介
金子守[カネコマモル]
1950年東京都生まれ。1977年東京工業大学大学院博士後期課程単位取得退学、理学博士(1979年)。筑波大学社会工学系助教授、一橋大学経済学部助教授、Virginia Polytechnic Institute and State University教授等を経て、現在、筑波大学社会工学系教授
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感想・レビュー
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KAZOO
124
経済学の解説にしては結構楽しませてくれる凝った本だという気がしました。落語の蒟蒻問答のような感じで、6人の登場人物と作者がいて、経済学のミクロ的な理論(ゲームの理論も含まれています)について解説しています。章立てではなく、曲ということで、一つの音楽になぞらえているのでしょう。私はこのような解説の仕方が好きです。むかし法律で山本桂一先生の新法学入門を思い出しました。こちらは歌舞伎でしたが。2017/01/16
せつし
3
少しだけ経済のお勉強してから読んだら反省させられた2013/04/29
kusano
3
半川の元ネタの人物が気になる.2012/08/10
てんてけてん
2
同じことについて話しているようでそれぞれの人が別の理解をしている可能性がある。ゲーム理論でも数学的な部分を共有してはいるが話すグループによってその解釈が異なる場合があると述べている。 個人の認識とは何か,社会科学が扱わないようにしてきたが考える必要がある問題に果敢に切り込んでいる点が面白い。 ゲーム理論のテキストという感じではないので注意。というかそれ以前の前提に関して考察が必要だという点を理解したい。2013/03/18
strb
1
批判精神を持って1年以上ゲーム理論を勉強してきた人すべてにおすすめ。 当たり前なのに誰も、どの本も教えてくれなかったことが書いてある。書き方はお世辞にもわかりやすいとは言い難いが、現状明快な答えのない問題を扱う以上仕方のない部分も大きい。 一方で、キャッチーなタイトルに騙されたゲーム理論初学者及び専ら従順な勉強にいそしんできた人は読まないことが自己防衛になると思います。2015/01/20