出版社内容情報
台湾で同性婚を認める法律が成立するまでのLGBT運動、政治過程、法の内容を分析し、法施行後の台湾社会の変化と課題を考察する。
内容説明
台湾はいかにして儒教的家父長制を克服し、婚姻平等を実現させたのか台湾人の三大発明「同志」「性別」「婚姻平権」とは?苦悩に満ちた闘いの道程、法施行後の台湾社会に何が起きているのか台湾の経験が日本の社会、司法、そして政治に示唆するものとは?同性婚の次に浮上する諸課題(子育て、老い、性別の多元化など)
目次
「同志」の誕生と台湾社会
「同志」運動の生起
制度化される「同志」
同性婚から「婚姻平権」へ
自治体パートナーシップ制度という「破口」
婚姻平等をめぐる民意
蔡英文政権誕生と民法改正案
大法官解釈までの道
大法官七四八号解釈の論理
国民投票による決戦
特別立方による制度化へ
同性婚法の内容と残された課題
ポスト同性婚と台湾社会のゆくえ
おわりに
著者等紹介
鈴木賢[スズキケン]
1960年北海道生まれ。北海道大学大学院法学研究科博士課程修了。北海道大学博士(法学)。北海道大学法学部助手、助教授、教授を経て、明治大学法学部教授、明治大学現代中国研究所長、北海道大学名誉教授、「自治体にパートナーシップ制度を求める会」世話人、北海道LGBTネットワーク顧問。中国法、台湾法を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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榊原 香織
76
アジア初の同性婚OKとなった台湾。 民法を違法とした判決、国民投票で否決されるもその後OKとなる、といった経過にも少々驚き。 投票の横で開票が始まる、というのも台湾的。2022/07/19
カモメ
5
台湾では個人より家庭を重んじる儒教文化に大きく影響を受けており、結婚のプレッシャーが強くカミングアウトに大きな困難が伴った。なかでもゲイの方が大きな期待を注がれ、同性との結婚はハードルが高いとされている。それゆえに匿名性が高い文学や秘密主義的な活動をする同志サークルが活発なのは台湾の特徴と言える。同志の中でも結婚や家族は異性愛強要の元凶しかなく、同性婚運動では「婚姻平等」をスローガンとし、性的指向による差別をなくし平等を達成するという側面が強調された。2022/08/23
ずー
2
台湾は進んだ国というイメージだったが、日本社会同様、同性婚が法制化されるまでには激しい反発があり、平坦な道のりではなかったことを知った。とはいえ、日本と違って政権与党が同性婚推進派というのはかなり大きかったと思う。 法制化される前の民意は反対の方が多かったが、最終的に立法府が、マイノリティの人権は多数決では守れないという考えのもと判断を下したというのはすごいことだと思った。日本は悪い意味で妙に「民意」にこだわるところがあるので、果たしてこういう判断ができるだろうか…と思ってしまった2022/07/20
テッテレこだち
1
タイトル通り台湾における同性婚法成立までと、成立後の経過について、日本の現状との比較を含めて述べている。不可視化されていた状況に対して文学の与えた影響や、法廷闘争の時系列などがわかりやすい。反面参考文献のインターネット上資料が2023年時点でまあまあ404で、8章などで挙がっているものは結構見られない。ネット時代の弊害だろう。 ともあれ「とりあえず日本の当事者はもっと戦え」という強めのメッセージが見られる。2023/03/26